TOP大野事務所コラム育児休業中に出向(出向解除)となった場合の育児休業給付金の取り扱い

育児休業中に出向(出向解除)となった場合の育児休業給付金の取り扱い

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

雇用保険法の改正により、育児に関する新たな給付金として、出生後休業支援給付金(育児休業給付金または出生時育児休業給付金への上乗せでの給付)と育児時短就業給付金(2歳未満の子を養育するために育児時短就業することで賃金が低下した場合の給付)が創設されます。改正法の施行日は202541日ですが、施行日前から行われている育児休業や育児時短就業であっても、要件を満たせば給付金の支給対象として扱われます。

 

このように育児に関する政策的な後押しは、年を追うごとに種々打ち出されてきています。反対に、育児休業給付金に関して取り扱いが厳格化される点もあり、それは保育所に入所できないことを理由として子の1歳到達日後の期間について給付金を受給しようとする場合に、ハローワークへ提示する確認書類が増えるというものです。詳細は割愛しますが、こちらも本年4月からの変更点です。

 

育児休業給付金に関しては、もう一つ4月から変更となることがあります。それが、出向または出向解除となった(被保険者としての在籍先が変わった)場合の給付金の受給可否に関してです。

現行の取り扱いは、「育児休業給付金の受給資格者が出向した場合であって、当該被保険者資格の喪失後1日の空白もなく被保険者資格を取得した場合には、出向元事業所における育児休業と、出向先事業所における育児休業とを分割して取得したものとして取り扱うこと。」(業務取扱要領59701)とされており、育休が実質的に継続しているにもかかわらず、給付金の取り扱いにおいては新たな育休の取得として扱われることとなっています。そのため、子が1歳に達するまでの期間において2回目の育休を取得している最中に出向となった(被保険者としての在籍先が変わった)ような場合には、出向先では給付金を受給できない結果となります[図表]

 

[図表] 資料出所:「令和6年雇用保険制度改正(令和741日施行分)について」(厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会(第197回)資料)

 

 

この扱いは、「1日の空白もなく被保険者資格を取得し、引き続き本体育児休業を取得する場合は、喪失に係る事業所の育児休業と、取得に係る事業所の育児休業とを分割して取得したものとして取り扱うこと。」(業務取扱要領59691)とされているとおり、いわゆる転職の場合も同様です。

 

転職の場合はこのような扱いにやむを得ない面があるようにも思われますが、出向の場合は必ずしも本人の希望により行われるわけでもないことから、その扱いは私も腑に落ちないところがありました。これが本年4月からは給付の対象となるよう改正されることとなり、あまり目立ちませんが喜ばしい改正点だといえます。

 

育児に関する諸制度は手厚さが増すのとあわせて、複雑さが増していることも否めません。私どもとしてもお客様へ的確なご案内・ご助言ができるよう、情報のキャッチアップと整理に一層努めてまいります。

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2024.12.02 ニュース
【急募!正規職員・契約職員・パート職員】リクルート情報
2025.03.05 大野事務所コラム
育児休業中に出向(出向解除)となった場合の育児休業給付金の取り扱い
2025.02.26 大野事務所コラム
降給に関する規定整備を考える
2025.02.19 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【フリーランス新法の概要(前編)】
2025.02.12 大野事務所コラム
新入社員歓迎会の帰宅途中の災害
2025.02.21 これまでの情報配信メール
出生後休業支援給付金の創設について
2025.02.06 これまでの情報配信メール
東京都のカスタマー・ハラスメント防止条例について・令和7年4月1日以降の高年齢雇用継続給付の支給率変更について
2025.02.05 大野事務所コラム
労働基準関係法制研究会の報告書が公表されました
2025.01.29 大野事務所コラム
「ビジネスと人権」とは周りに思いを馳せること―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊳
2025.01.24 これまでの情報配信メール
令和7年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について・SNS等を通じて直接労働者を募集する際の注意点
2025.01.22 大野事務所コラム
マイナポータル上での離職票交付サービス開始について
2025.01.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【介護と両立できる働き方とは】
2025.01.16 これまでの情報配信メール
マイナポータルにおける離職票直接送付サービス開始について
2025.01.15 大野事務所コラム
雇用保険法の改正
2025.01.14 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【労働基準監督署における定期監督等の実施結果について】
2025.01.08 大野事務所コラム
企業による奨学金返還支援制度を考える
2024.12.25 大野事務所コラム
来年はもっと
2024.12.20 ニュース
書籍を刊行しました
2024.12.20 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【労働条件の不利益変更】
2024.12.20 ニュース
年末年始休業のお知らせ
2024.12.18 大野事務所コラム
【通勤災害】通勤経路上にないガソリンスタンドに向かう際の被災
2024.12.11 大野事務所コラム
【賃金のデジタル払いの今と今後の広がりは?】
2024.12.09 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(後編)】
2024.12.04 大野事務所コラム
X.Y.Z―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊲
2025.01.08 これまでの情報配信メール
令和6年度年末年始無災害運動・高年齢労働者の安全衛生対策について
2024.11.30 これまでの情報配信メール
令和6年12月2日以降は健康保険証が発行されなくなります・養育期間標準報酬月額特例申出書の添付書類の省略について
2024.11.27 大野事務所コラム
産前産後休業期間中の保険料免除制度は実に厄介
2024.11.20 大野事務所コラム
介護についての法改正動向
2024.11.14 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【未払い賃金請求権と時効期間】
2024.11.22 これまでの情報配信メール
データでみる70歳以上の定年・継続雇用制度の導入効果と工夫、大野事務所モデル規程・協定一部改定のお知らせ
2024.11.12 これまでの情報配信メール
過重労働解消キャンペーン、2024年12月からの企業型DCおよびiDeCoの変更点について
2024.11.13 大野事務所コラム
PRIDE指標をご存知ですか
2024.11.05 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(中編)】
2024.10.31 これまでの情報配信メール
賃金のデジタル払い、令和7年3月31日高年齢者雇用確保措置における経過措置期間の終了について
2024.10.30 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは③
2024.10.23 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【職場や外出先への移動時間は労働時間に該当するか】
2024.10.23 これまでの情報配信メール
令和6年年末調整における定額減税に関する事務・簡易な扶養控除等申告書について
2024.10.16 大野事務所コラム
本当に「かぶ」は抜けるのか―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊱
2024.10.11 これまでの情報配信メール
令和6年版労働経済の分析(労働経済白書)について
2024.10.09 大野事務所コラム
労働者死傷病報告等の電子申請義務化について
2024.10.04 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(前編)】
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop