マイナポータル上での離職票交付サービス開始について
こんにちは。大野事務所の高田です。
今年(2025年)1月20日より、マイナポータル上で離職票が交付されるサービスが始まりました。(因みに、この文章はその2日前の1月18日に書いています。)
このトピックについては、筆者が当初予想していたよりは反響が小さく、ひっそりと運用開始を迎えているような気がしますが、先月のマイナ健康保険証の取扱開始と並んで、いよいよデジタル新時代の到来を象徴する画期的な出来事なのではないかと個人的には捉えています。
1.マイナポータル上での離職票交付サービス
このサービスを利用するための条件は次の3つです。
① ハローワークへマイナンバーを届け出ていること
② 離職者がマイナポータルと雇用保険WEBサービスとを連携設定していること
③ 事業主が電子申請で手続きすること
マイナポータル上で離職票(PDFファイル)を受け取った離職者は、離職票を印刷してハローワークへ持参する必要がなく、スマートフォンの画面を提示することで雇用保険の受給手続きが可能なのだそうです。
当面はこのサービスを実際に利用する離職者はまだまだ少ないかもしれませんが、いずれ認知度が高まり、利便性が評価されれば、一気に普及していく可能性は充分にあると思います。さらには、離職票のみに留まらず、資格取得時に交付される被保険者証や、育児休業給付金をはじめとする給付金の支給決定通知書などにも拡充して頂ければ、事業主を経由して被保険者へ書面を交付する機会が減って省力化に繋がるのではないかと期待しています。
■2025年1月から、希望する離職者のマイナポータルに「離職票」を直接送付するサービスを開始します!(厚生労働省リーフレット) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001353550.pdf
2.健康保険の被保険者証もこのスタイルの方がよい
さて、先月(2024年12月)のマイナ健康保険証の取扱開始と少し絡めて考えます。
こちらは、患者のマイナンバーカードを医療機関の端末から読み込み、健康保険の被保険者情報を照会する形を採っています。
私事になりますが、先月末に新型コロナウイルスに罹り近所の医院を受診しました。感染防止のため医院の外で検査や診察を受けたのですが、早速マイナ健康保険証を使ってみようと提示したところ、「マイナ健康保険証の場合、医院の中の端末でパスワードを入力して頂かなければならないので、従来の保険証をお願いします」とのことで、初っ端から利用機会を逸してしまいました。言われてみれば、医療現場では、患者自身が端末上でパスワードを入力できない事態(忘れた場合も含め)もしばしば生じる気がしますし、券面を提示するだけの従来型の方が便利であるという一面もあることに今更ながら気付かされた次第です。
そこでふと思ったのですが、今回の離職票の電子交付と同じように、健康保険証もマイナポータル上で券面表示される形で交付されれば、スマートフォンを提示するだけで医療機関の受診ができるのではないか?ということです。実際には、券面画面の偽造や悪用の問題のために技術的に実現が難しいのかもしれませんが、是非検討して頂きたい施策の1つです。
3.ねんきん定期便もマイナポータルへ電子送付が可能に
こちらはあまり話題になっていませんが、ねんきん定期便も今月(2025年1月)よりマイナポータル上で受け取ることができるようになりました。電子送付を希望する場合は、マイナポータル上から設定します。
■ねんきん定期便をマイナポータルへ電子送付(日本年金機構ホームページ)
https://www.nenkin.go.jp/n_net/introduction/nenkinteikibin_data.html
個人的には、ねんきん定期便以外にも、「年金額改定通知書」「年金振込通知書」「医療費のお知らせ」といった各種通知書類についても、行政コスト削減の観点からどんどん電子交付を推進して頂きたいです。筆者よりも上の年代層では、PCやスマートフォンをうまく操作できなかったり、まだまだ紙の通知書の方が安心感があるといった感覚から電子交付を希望する人は少ないかもしれませんが、若い年代になればなるほど、電子交付に抵抗が少ない(むしろ好む)人が多いのではないかと思っています。
4.住民税の特別徴収税額通知書の電子化について
こちらは税の分野になりますが、住民税の特別徴収税額通知書についてもマイナポータル上での電子送付が検討されています。昨年(2024年)より、eLTAX上で電子データでの受け取りが可能になりましたが、現時点では、事業者が電子データを受け取って従業員へ配付する仕組みですので、事業者の負担はあまり軽減されていない気がします。
これが、マイナポータル上で各人に直接通知書が送付されることになれば、行政、事業者ともに通信コストや事務負担の軽減が図られます。電子送付の希望者と希望しない者とが混在している状況下では、通知方法が電子と紙媒体の2通りに分かれるため却って管理の手間が増えるとの見立てがありますが、長期的な視野に立って是非早期に実現して頂きたいところです。
執筆者:高田
高田 弘人 特定社会保険労務士
パートナー社員
岐阜県出身。一橋大学経済学部卒業。
大野事務所に入所するまでの約10年間、民間企業の人事労務部門に勤務していました。そのときの経験を基に、企業の人事労務担当者の目線で物事を考えることを大切にしています。クライアントが何を望み、何をお求めになっているのかを常に考え、ご満足いただけるサービスをご提供できる社労士でありたいと思っています。
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