X.Y.Z―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊲
こんにちは。
大野事務所の今泉です。
まずはお知らせです。
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さて本日の話題ですが、このコラムを書くとき、すごく速く(2時間程度!)書き終えてしまう場合と少しずつ時間をかけて書いていく場合など色々なパターンがあるのですが、書き終える速さとコンテンツの質にはあまり影響がないようです。よくミュージシャンの方が、「売れた曲は秒でできた」とか仰っていますが、それは一部の人のことなんだなぁとつくづく感じます。
そんなこんなでこのコラムを書き続けて36回にもなるのかぁと思い、なんとなくこれまでの内容を読んでいたのですが、「後日触れる」と書いていて、無視し続けたものがあることが分かりました(!)
それが今回の内容なのですが、「マグレガーのXY理論」といわれているものです。第9回でモチベーションや従業員エンゲージメントについて書いているのですが、そこでさらっと流しているんですね。
ということで、今回はその尻拭いをしようと思うのですが、そもそもXY理論とは以下のようなものです。
X理論:「人は基本的に怠ける傾向があるため、厳しい管理が必要」という考え方 Y理論:「人は仕事にやりがいを感じ、自己実現を目指す」という考え方
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より細かく説明すれば、X理論は、マズローの欲求5段階説(第8回で登場)における「生理的欲求」や「安全の欲求」といった低次欲求を比較的多く持つ人間の行動モデルとされます。例えばやる気のない部下に対して命令や強制等で管理を行い、目標が達成できれば報酬を与え、達成できない場合は罰を与えるという方法です。いわゆる「アメとムチ」ですね(権限行使による命令統制。)
一方で、Y理論は、マズローの欲求5段階説における「社会的欲求」や「自己実現欲求」といった高次欲求を比較的多く持つ人間の行動モデルとされます。例えば目標や責任・権限を与えることによって、動機づけを行います(統合と自己統制)。
「アメとムチ」については分かりやすいところでしょう。以前、ムチは弱化でありメリットに乏しい(第33回)、という文脈で書きました。
「統合と自己統制」というのは難しい言葉ですのでさらに説明すると、例えば企業目標と従業員個人の欲求や目標を「統合」することができれば、企業はより効率的に目標を達成することができる、その場合において従業員は自発的に自分の能力・知識・技術・手段を高めていくことになり、企業の発展に貢献するようになる、ということといわれます。
このような二項対立型の立論は性善説と性悪説(両者は提唱者が異なりますが)のようによくあるパターンです。
性善説:「人間の本性は善(倫理的な存在)であり状況によっては堕落してしまうため、教育により努力を惜しまないことで善を維持するべき」とする説 性悪説:「人間の本性は悪(弱い存在)でありそのままだと堕落してしまうため、教育によって悪を押さえつける努力を継続するべき」とする説
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実は、両者とも教育の重要性を説いたもので、性善説は人を善と信じるべきとは言っていませんし、性悪説は人を悪と疑えとは言っていません。これは誤用です。
・・・話が逸れましたが、このX理論とY理論、一見するとY理論の方が優れているというように見えますが、現在ではどちらが優れている、というよりもシチュエーションや環境によって使い分けるべきとされています。ルーティンが要求されるような場面では、利潤を最大化するため正確性と効率性が重要ですので、X理論的マネジメントが適しているでしょう。付加価値の増加を目的とするような新商品の研究開発部門などは自律性と創造性が要求されますので、Y理論的マネジメントが有効だと思います。
そういった仕事における使い分けのみならず、企業のステージにおいてもスタートアップ時はY理論的な方がよいでしょうし、安定してくればX理論的な管理も必要になってくるかもしれません。
個人においても、その日その日で調子が変わるわけですから、常にY理論的状態でいろ、というのも無理がある話です。
冒頭に述べたコラムにかかる時間も、ササッと書けてしまうときは、Y理論的なマインドになっていて、延ばし延ばしで書いているときはX理論的なマインドになっているのかもしれません(書けたら飲みに行こう等)。。。
ところで、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、XY理論を克服すべく提唱された「Z理論」なるものも存在します。
これは日本的経営がもてはやされた際の理論的検証ともいえるものです。つまり、日本の特徴的経営システムは以下の7つとされ、評価としてはX理論とY理論の中間のような位置づけがなされているようです。
1.終身雇用 2.ゆっくりとした昇進 3.ジェネラリストの育成 4.非明示的な管理機構(評価や意思決定の基準や目標が具体的な形で示されない) 5.意思決定への参加的アプローチ(重要な決定は稟議等という形態) 6.集団責任 7.職場だけでもない人間関係の形成
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ここでは、組織や集団の目的の達成を優先する人間観に立ち、組織内の共通の価値観や組織文化によってメンバーを統率していくことを意図します。
古き良き時代の日本という感じもしないではないですが、時にはこれらは日本企業の弱点とされたりもしますので、やはり状況に応じた使い分けが必要なのでしょう。
XYZというとお酒かシティハンターが思い浮かんでしまうのですが、今回紹介したXYおよびZの各理論は結局のところなぜXなのか、Yなのか、はたまたZなのかは定かではありません。ただ、アルファベット+理論というネーミングは何となくキャッチ―な気がしませんでしょうか(毛色は違いますが、U理論というのもあります。)?
早いもので今年ももう少しで終わり。
次回から新しいシリーズものを考えています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
今泉 叔徳 特定社会保険労務士
パートナー社員
群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。
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