介護についての法改正動向
こんにちは。大野事務所の深田です。
今回のコラムでは、介護についての法改正動向を確認しておきたいと思います。
改正育児・介護休業法が先の通常国会で可決・成立したところであり、主たる施行日である2025年4月1日に向けて、本コラムでも育児関係を中心に法改正の内容を取り上げてきました。
改正事項としては育児関係が中心ではあるのですが、介護に関する改正事項も一部含まれています。介護休業制度そのものに関する改正は行われておらず、この点に関しては法改正に向けた労働政策審議会による建議の中で、「現段階では、(1)の取組(*執筆者注:法改正による新たな義務(家族の介護の必要性の申出をした労働者に対する個別の周知等および環境整備)のこと)による制度目的の理解促進を通じて、効果的な利用を促すことが重要であり、介護休業ができる期間や分割回数については、改正を行わないこととすることが適当である。」とされています。
介護休業については、法の内容を上回る形で自社独自の制度を導入しているケースも目にしますが、注意しなければならないのは、手厚い制度内容としたがために結果として法に抵触する部分が生じてしまうことがあるという点です。例えば、「対象家族の人数に関わらず、介護休業の期間は通算365日間の範囲内で3回までの分割取得が可能。」という規定があったとします。法律上の介護休業期間である「通算93日間」に比べれば非常に手厚い内容ですが、「対象家族の人数に関わらず」としていることで、1人の対象家族に対する介護休業に365日間のすべてを使った場合に別の対象家族については介護休業を取得できないということだとすれば、「対象家族1人につき通算93日間の介護休業」という法の内容を下回ることとなります。
さて、今回の法改正についての概要は、以下のとおりです(いずれの改正事項も施行日は2025年4月1日)。コラム執筆時点で通達がまだ発出されていないため細部が不明なところもありますが(通達に先行してQ&Aが11月1日に公開されました)、まずは全体像を掴んでいただきたいと思います。
<令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A(令和6年11月1日時点)>
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001325224.pdf
1.家族の介護の必要性に直面した労働者が申出をした場合に、事業主が両立支援制度等に関する情報を個別に周知し(※1)、意向を確認することを義務づける(改正育介法第21条第2項、同法施行規則第69条の7・69条の8)。 (※1)個別周知を要する「両立支援制度等に関する情報」とは、以下のとおり。 (1)介護休業に関する制度 (2)介護休暇に関する制度 (3)所定外労働の制限に関する制度 (4)時間外労働の制限に関する制度 (5)深夜業の制限に関する制度 (6)介護のための所定労働時間の短縮等の措置 (7)介護休業申出および介護両立支援制度等(上記(2)~(6))申出の申出先 (8)介護休業給付金に関すること
2.介護保険の第2被保険者となる40歳のタイミング等の効果的な時期に、事業主が労働者に対して、介護に関する両立支援制度等の情報を記載した資料等を配布する等の情報提供(※2)を一律に行うことを義務づける(改正育介法第21条第3項、同法施行規則第69条の10)。 (※2)対象となる労働者に知らせるべき事項は、以下のとおり。知らせる方法は、面談や書面交付など。 (1)介護休業に関する制度および介護両立支援制度等 (2)介護休業申出および介護両立支援制度等申出の申出先 (3)介護休業給付金に関すること
3.介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われれるようにするため、研修の実施や相談体制の整備などの措置を講じなければならないものとする(改正育介法第22条第2項、同法施行規則第71条の3)。
4.要介護状態にある対象家族を介護する労働者に関して事業主が講じる措置(努力義務)に在宅勤務を加える(改正育児・介護休業法第24条第4項)。
5.介護休暇について、引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外できる仕組みを廃止する(改正育児・介護休業法第16条の6第2項)。 |
なお、以上のうち就業規則(規程)の変更までを要するのは、4点目(在宅勤務の措置を講じる場合)と5点目(勤続6か月未満の労働者を適用除外としている場合。労使協定の再締結も必要)です。
執筆者:深田
深田 俊彦 特定社会保険労務士
労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員
社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。
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