PRIDE指標をご存知ですか
代表社員の野田です。担当する企業様より、work with Pride(PRIDE指標)の最上位取得を目指したいとの相談を受けたのですが、私が当該指標に関し十分に認識していなかったので、今回はPRIDE指標について触れたいと思います。
- 〇PRIDE指標とは
「一般社団法人work with Pride」という団体があります。こちらは、企業などの団体がLGBTQ+(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなど)の性的マイノリティに関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する団体であり、当該団体がLGBTQ+に対する企業等の取組みを評価する際の指標を「PRIDE指標」と呼んでおり、指標は以下の5つの評価項目に基づいています。
1.Policy (行動宣言): 企業や団体全体でLGBTQ+に対する取り組みを行うことを示す行動宣言
2.Representation (当事者コミュニティ): 社内にLGBTQ+の当事者コミュニティや相談窓口を設置
3.Inspiration (啓発活動): LGBTQ+に対する理解を深めるための啓発活動
4.Development (人事制度・プログラム): LGBTQ+の従業員が働きやすい環境を整えるための人事制度やプログラム
5.Engagement/Empowerment (社会貢献・渉外活動): LGBTQ+が暮らしやすい社会を実現するための社会貢献や渉外活動
なお、LGBTQ+の「Q」は、クエスチョニング(Questioning)のことであり、自身の性自認や性的指向が定まっていない、または意図的に定めていないセクシュアリティーを指します。また、「+」は、他にも様々なセクシュアリティーがあることを表しています。
work with Pride:work with Pride – Home
- 〇認定基準
「PRIDE指標」で示す基準・項目を一定程度満たした場合、「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」のいずれかの認定がなされますが、2023年には834社の企業・団体等(大企業78%、中小企業22%)が応募され、そのうちゴールドが326社、シルバーが56社、ブロンズが15社、認定無し1社という結果だったようです。
これに加えて、国・自治体・学術機関・NPO/ NGOなどとのセクターを超えた協働を推進する企業を評価する「レインボー」認定というものがあります。2021年に新設された「レインボー」認定は、企業や団体がLGBTQ+の人々が自分らしく働ける職場や社会を実現するために、他のプレイヤーと協力しながら中長期的にコミットメントする取り組みを評価するものであり、以下の要件を満たす企業や団体に授与されます。
- PRIDE指標で「ゴールド」認定を獲得していること
- LGBTQ+に関する法制度の実現に賛同表明していること
- セクターを超えた主体と協働するコレクティブ・インパクト型の取り組みを推進していること
この認定は、企業が単独で行う取り組みを超えて、他の企業や団体と連携し、LGBTQの人々が働きやすい環境を作るための努力を評価するものとなっていますが、「PRIDE指標2023」には、21社がレインボー認定されています。
毎年11~12月頃に「PRIDE指標レポート」というものが発行されていますので、2024年レポートも間もなくといったところでしょうか。
PRIDE指標2023レポート:https://workwithpride.jp/wp/wp-content/uploads/2023/11/report_prideindex2023.pdf
- 〇LGBTQ+への対応
弊所顧問先企業様におきましても、一部を除き、LGBTQ+への対応はまだまだこれからといった感じではありますが、人事制度等を整備するうえでは、4つ目の評価指標である「Development」が参考になります。
当該指標では、「休暇・休職(結婚、出産、育児、養⼦縁組、家族の看護、介護等)」、「⽀給⾦(慶事祝い⾦、弔事⾒舞⾦、出産祝い⾦、家族⼿当、家賃補助等)」、「赴任(赴任⼿当、移転費、赴任休暇、語学学習補助等)」、「その他福利厚⽣(社宅、ファミリーデー、家族割、保養所等)」がある場合、同性パートナーがいることを会社に申請した従業員およびその家族にもこれらを適⽤し、社内に向けて公開しているかについて、評価しています。
私が相談を受けた際にも、何をどこまで対応すれば良いか、他社ではどこまで対応しているのかといったご相談を受けましたので、これから整備しようとお考えの企業様は当該指標を参考にして頂くと良いのではないでしょうか。
なお、既に対応されている企業様からお話を伺いますと、各種制度を利用できる状況にあるものの利用する方はほとんど居ないとのことです。それには、社内でのカミングアウトに対する躊躇や必要書類の入手困難さがあるのではないか、ということをおっしゃっていました。確かに、制度を導入すれば良いということではなく、制度を利用できる環境を整備する必要があり、そのためには法整備は勿論のこと、我々の価値観を変えていく必要がありそうです。
今年(2024年)3月には、同性婚が認められていない民法や戸籍法の規定は、婚姻の自由や法の下での平等を定めた憲法に違反するとした初の札幌高裁判決が出ましたが、これに続き10月30日には東京高裁でも違憲と判断されました。これから徐々に法整備が進むものと思われますが、税・社会保険制度における同性扶養が認められるには、もう少し時間がかかりそうです。
執筆者:野田
野田 好伸 特定社会保険労務士
代表社員
コンサルタントになりたいという漠然とした想いがありましたが、大学で法律を専攻していたこともあり、士業に興味を持ち始めました。学生時代のバイト先からご紹介頂いた縁で社労士事務所に就職し、今に至っています。
現在はアドバイザーとして活動しておりますが、法律や制度解説に留まるのではなく、自身の見解をしっかりと伝えられる相談役であることを心掛け、日々の業務に励んでおります。
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