TOP大野事務所コラム女性活躍推進法の改正動向

女性活躍推進法の改正動向

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

今回のコラムでは、女性活躍推進法の改正動向を確認しておきたいと思います。

 

近時は、女性活躍推進法のほか、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画、労働施策総合推進法に基づく正規雇用労働者の中途採用比率の公表、あるいは育児・介護休業法に基づく男性の育休取得率等の公表のように、「公表」という形で事業主に取り組みを求めるケースが増えてきています。その趣旨としては、単に目標や数値を公表するということではなく、自社の就労環境上の課題を把握した上で課題解決に取り組み、生産性の向上へ繋げていくなどの狙いがあるといえるでしょう。

 

女性活躍推進法は、10年間の時限立法として201641日に施行されたもので、各企業において自社の女性活躍に関する状況を把握・分析した上で目標を設定し、一般事業主行動計画という形での策定・届け出および情報公表を求めています。

 

元々は、大企業(常時雇用する労働者数が301人以上)に対しては義務、中小企業(同300人以下)に対しては努力義務としてスタートしていましたが、202241日以降は101人以上の企業までが義務の対象とされました。同年78日からは情報公表項目の選択肢の一つとして「男女の賃金の差異」が追加されるとともに、大企業に対して当該項目の公表が義務づけられています。

 

また、一般事業主行動計画の策定・届け出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良である等の一定の要件を満たした場合に認定を受けられる「えるぼし認定」の制度があります。また、えるぼし認定企業のうち、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が特に優良である等の一定の要件を満たした場合に認定を受けられる「プラチナえるぼし認定」の制度も20206月から始まっています。

 

これまでの経緯をざっと振り返ると以上のとおりですが、20242月からは厚生労働省の「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」が開催され、雇用の分野における女性活躍推進やハラスメントについて現状の分析や論点整理を行い、去る88日には同検討会の報告書が公表されました。

 

<資料>「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会 報告書」(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/001285696.pdf

 

報告書で示されている主要な点としては、以下が挙げられます。

<雇用の分野における女性活躍の更なる推進>

・女性活躍推進法の期限を10年間延長することが適当。

・男女間賃金差異の公表については、101人以上300人以下の企業においても義務とすることが適当。

・女性管理職比率については、企業の実情を踏まえつつ情報公表における開示必須項目とすることが適当。併せて、男女別管理職登用比率の付記を促すことも検討すべき。

 

<月経・不妊治療・更年期等の健康課題への対応>

・女性特有の健康課題への取組の要素を女性活躍推進法の事業主行動計画に盛り込むことを検討すべき。

・女性特有の健康課題に取り組む企業を評価するための、えるぼし認定制度の見直しをすることが適当。

 

<職場におけるハラスメント対策の充実>

・一般に職場のハラスメントは許されるものではないという趣旨を法律で明確化することが考えられる。

・カスタマーハラスメント(カスハラ)については、企業横断的に取組が進むよう、対策強化が必要。労働者保護の観点から事業主の雇用管理上の措置義務とすることが適当。カスハラの定義については、以下3つの要素のいずれも満たすものとして検討すべき。

① 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと

② 社会通念上相当な範囲を超えた言動であること

③ 労働者の就業環境が害されること

・就活等セクシュアルハラスメントについても、事業主の雇用管理上の措置が講じられるようにしていくことが適当。

 

女性活躍推進法の期限延長(*)や情報公表項目拡大に向けた動きには引き続き注視していく必要がありますが、ハラスメント対策への言及も注目すべきポイントです。いわゆるカスハラは社会問題としても非常に大きく、看過できないレベルに至っているといえます。就活等セクシュアルハラスメントの問題についても、セクハラのみならずパワハラ含め、公正な採用選考の観点などとあわせて選考担当者へ改めて教育を行うきっかけとして捉えていただくのもよろしいのではないでしょうか。

 

<ご参考>「就活ハラスメント防止対策 企業事例集」(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001060585.pdf

 

(*)同じく10年間の時限立法であった次世代育成支援対策推進法(20054月施行)については、有効期限の延長を経て2025331日が期限となっているところ、先の通常国会で成立した改正法により、更に10年間の延長(2035331日まで)が決まっています。

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2024.12.02 ニュース
【急募!正規職員・契約職員・パート職員】リクルート情報
2024.12.04 大野事務所コラム
X.Y.Z―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊲
2024.11.30 これまでの情報配信メール
令和6年12月2日以降は健康保険証が発行されなくなります・養育期間標準報酬月額特例申出書の添付書類の省略について
2024.11.27 大野事務所コラム
産前産後休業期間中の保険料免除制度は実に厄介
2024.11.20 大野事務所コラム
介護についての法改正動向
2024.11.14 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【未払い賃金請求権と時効期間】
2024.11.22 これまでの情報配信メール
データでみる70歳以上の定年・継続雇用制度の導入効果と工夫、大野事務所モデル規程・協定一部改定のお知らせ
2024.11.12 これまでの情報配信メール
過重労働解消キャンペーン、2024年12月からの企業型DCおよびiDeCoの変更点について
2024.11.13 大野事務所コラム
PRIDE指標をご存知ですか
2024.11.06 大野事務所コラム
AIは事務所を救うのか?
2024.11.05 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(中編)】
2024.10.31 これまでの情報配信メール
賃金のデジタル払い、令和7年3月31日高年齢者雇用確保措置における経過措置期間の終了について
2024.10.30 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは③
2024.10.23 大野事務所コラム
在籍出向者を受け入れる際の労働条件の明示は出向元・出向先のいずれが行うのか?
2024.10.23 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【職場や外出先への移動時間は労働時間に該当するか】
2024.10.23 これまでの情報配信メール
令和6年年末調整における定額減税に関する事務・簡易な扶養控除等申告書について
2024.10.16 大野事務所コラム
本当に「かぶ」は抜けるのか―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊱
2024.10.11 これまでの情報配信メール
令和6年版労働経済の分析(労働経済白書)について
2024.10.09 大野事務所コラム
労働者死傷病報告等の電子申請義務化について
2024.10.04 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(前編)】
2024.10.02 これまでの情報配信メール
労働者死傷病報告の報告事項改正及び電子申請義務化について
2024.10.02 大野事務所コラム
女性活躍推進法の改正動向
2024.09.26 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【社会保険の適用が拡大されます】
2024.09.25 大野事務所コラム
社会保険の同月得喪と2以上勤務を考える
2024.09.18 大野事務所コラム
理想のチーム
2024.09.11 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは②
2024.09.11 これまでの情報配信メール
令和6年度地域別最低賃金額の改定状況について・大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドラインについて
2024.09.04 大野事務所コラム
フレックスタイム制適用時における年次有給休暇の時間単位取得と子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得
2024.08.28 大野事務所コラム
やっぱり損はしたくない!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉟
2024.08.31 これまでの情報配信メール
「健康保険資格情報のお知らせ及び加入者情報」の送付、マイナンバーカードの健康保険証利用について
2024.08.21 これまでの情報配信メール
雇用保険基本手当日額および高年齢雇用継続給付等の支給限度額変更・令和7年4月1日以降の高年齢雇用継続給付の段階的縮小について
2024.08.21 大野事務所コラム
ライフプラン手当のDC掛金部分を欠勤控除の計算基礎に含めてよいのか?
2024.08.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【減給の制裁における労働基準法の制限】
2024.08.10 これまでの情報配信メール
雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績について等
2024.08.07 大野事務所コラム
1か月単位の変形労働時間制における時間外労働の清算
2024.08.02 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【管理監督者の適正性】
2024.07.31 大野事務所コラム
健康情報取扱規程の作成は義務⁈②
2024.07.24 大野事務所コラム
ナレッジは共有してこそ価値がある
2024.08.01 これまでの情報配信メール
2024年 企業の「人材確保・退職代行」に関するアンケート調査 カスタマーハラスメント対策企業マニュアルと事例集
2024.07.19 これまでの情報配信メール
仕事と介護の両立支援に向けた経営者向けガイドライン
2024.07.17 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは①
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop