TOP大野事務所コラムやっぱり損はしたくない!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉟

やっぱり損はしたくない!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉟

こんにちは。大野事務所の今泉です。

パラリンピックが始まりますね!

 

さて、前回まで行動分析のことを書いてきたのですが、これと言葉的にはよく似ているけれども全く別物である「行動経済学」というものがあります。

 

書籍などで読んだことがある、とかTVなどで見たことがある、という方も多くいらっしゃるかと思いますが、行動分析は望ましい行動をとるためにはどうすればよいか?という点に着目したものであるのに対し、行動経済学は経済社会の中で、人はどう行動するのかを心理学的に観察された事実を分析することを目的としたものです。それ以前の経済学は「人間は常に合理的な選択をし、自己利益を最大化しようとする『合理的経済人』」を前提としていたわけですが、行動経済学は「人は必ずしも合理的な行動をとるわけではない」という前提に立っています。

 

そして、行動経済学の果実はマーケティング、政策立案、金融、消費者行動等、様々な分野で応用されており、個人や組織の意思決定を理解し、改善するための足掛かりとなっている理論となっています。

例えば、次のような考え方・理論が有名でしょう。

 

  1. 1.限定合理性

人々は、情報処理能力や時間、資源が限られているため、完全に合理的な選択を行うことができない、という概念です。このため、人々は「満足解」を選ぶことが多く、これは必ずしも最適な選択ではないことがあります。

 

  1. 2.プロスペクト理論

損失の痛みは同じ金額の利益の喜びよりも大きいとする「損失回避」を示しています。人々は、利益を得るよりも損失を避けるための行動に動機付けられることが多いとされます。

 

  1. 3.フレーミング効果

同じ事実や選択が、どのように提示されるかによって異なる反応や意思決定を引き起こすことがあります。例えば、ある治療法の成功率が「90%の成功率」と提示される場合と「10%の失敗率」と提示される場合、人々の選択に影響を与える可能性がある、とされます。

 

  1. 4.ナッジ

軽い介入(ナッジ:合図のために肘で小突くの意)を通じて、人々がより良い選択をするよう促す方法です。例えば、食堂でヘルシーな食品を手に取りやすい位置に配置することで、健康的な選択を促す、といったものです。

 

  1. 5.社会的影響と同調行動

人々は、他者の行動や意見に影響されやすく、社会的な圧力や集団の期待に従う傾向があります。例えば、行列のできるラーメン店に魅力を感じたりするように、多くの人が行っている行動や選択を見て、自分もそれに従うことがあります。

 

6.サンクコスト(埋没費用)

すでに支払ったり、投資したりした費用や時間で、今後の意思決定において回収不可能なものを指します。サンクコストは、経済的には既に「失われた」ものとみなされるため、合理的な意思決定をする上では考慮すべきではないとされています。

 

中でもプロスペクト理論における「損失を避けようとする強い傾向が、意思決定に大きな影響を与えることを示している」という内容は非常に面白いと感じました。

例えば、こういった事例が有名です。

 

あなたがABの選択肢を持っているとします。

・選択肢A: 100%の確率で100,000円をもらえる。 

・選択肢B: 50%の確率で200,000円をもらえるが、50%の確率で何ももらえない。

 

多くの人は、リスクを避けて、確実に100,000円をもらえるAを選ぶとされています。利益を得る場合、リスク回避的になるということですね。

 

一方で、損失の例として、以下のようなものはどうでしょう。

・選択肢C: 100%の確率で100,000円を失う。

・選択肢D: 50%の確率で200,000円を失うが、50%の確率で何も失わない。

 

結果は割れるかもしれませんが、リスクを取ってDを選ぶかな、というかんじでしょうか。上の例ではA一択といってもいいかもしれませんが、こちらの例では少なくとも迷いますよね。これは損失を避けるため、リスクを取る傾向があることを示している、とされています。また、「得をした」という嬉しさより、「損をした」という残念さの方を強く感じる、という傾向があると言われており、このようなことをグラフ化したものが下図となります。

 

 

これは価値関数というもので、利益を得た場合(右半分)より、損をした場合(左半分)のほうが、グラフの傾斜が大きくなっているのですが、つまりは「得をした喜び」より「損をした残念さ」の方が大きく感じる、ということを意味しています。リファレンス・ポイント(参照点)とあるのが損益分岐点のようなものでしょうか。

 

とすると、損失が回避できないときに不満が募ることになる、ということに繋がるわけですから、損失を回避するためのオルタナティブやサブシステムが重要であるように思えます。特にこれらの存在が労働条件の変更や人事制度改定をする際の進め方に参考にならないかな、などと妄想しているのですが、どうでしょうか?

 

今回は、「人と人との関係性」とは付かず離れずといった感じの内容でした。

なお、門外漢の分野ということもあり、ChatGPTくんの手助けをお借りしました。。。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

今泉 叔徳

今泉 叔徳 特定社会保険労務士

パートナー社員

群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。

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