CHANGE!!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉞
こんにちは。大野事務所の今泉です。
もうすぐオリンピックですね。
さて、これまで行動というものに着目し、いかにして望ましい行動をとってもらうのか、あるいは望ましくない行動をさせないのか、望ましい行動を循環させるにはどうすればよいか、という点を述べてきました。
これらは行動分析という概念で、ここでは研究により明らかとなっている成果の一部を展開してきました。もちろん、これが全てということではなく、行動分析はもっとより奥深い内容が含まれています。詳細は専門書をぜひご一読いただきたいのですが、ここで行動分析の特徴を表すならば、「人が行動する理由を明らかにすること」といえるのではないか、と考えています。
やらなければならないと思っていることができない、やってはいけないと分かっているのにやってしまう、そこには理由があり、それは客観的に解明できるものである、という思想が行動分析にはあります。
我々は普段、先入観(バイアス)をもって物事を見がちですが、これは非常にもったいないことですし、ときには誤った判断をもたらす厄介なものです。このことはこのコラムの最初の方で述べさせていただきましたが、一例をあげると、どことなくやる気がないように見える同僚に対して、「あの人はああいう性格だから」とか「怠け癖がある人だから」というように性格や人格で判断してしまうことはないでしょうか。
しかし、性格や人格で人を判断してしまうということは一定のバイアスがかかった見方であり、何をもってやる気がないと見えるのか、挨拶をしても無視されるからなのか、仕事のペースが遅いからなのか、会議で全く発言しないからなのか、その具体的な理由が分かりません。
つまり、「やる気がない」「覇気がない」あるいは「怠け癖がある」「暗い」といったものは単なるレッテルに過ぎず、これでは相手を理解したつもりにとどまってしまい、真に理解することが不可能となってしまいます。
また、このことは相手のみならず自分についても当てはまることであり、自分にレッテルを貼ることで安心しきってしまう、という状態に陥ることになります。気持ちを軽くすることはできるかもしれませんが、成長は止まります(気持ちを軽くすることも大事です。)。
このような事態を払拭するため、状態を行動に置き換えて考えてみる、というのが行動分析です。
これにより相手あるいは自分への理解に繋がるアクションを起こすことができるようにもなるでしょう。
行動分析の基本は以下のようなものでした。
|
起こる |
なくなる |
良いこと |
強化 |
弱化 |
嫌なこと |
弱化 |
強化 |
※ 行動直後に何も起こらない ⇒ 消去
そしてこれらを活かすテクニックとして、、、
・ シェイピング ・・・ 目標行動に向かって段階的に強化(弱化)する
・ チェイニング ・・・ 一連の行動を順番に強化していく
・ トークン ・・・ 強化を効果的に行うための「もの」
を紹介しました。
このような手法はまだまだあるのですが、最後にかの有名は山本五十六の言葉について記したいと思います。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」
ご存知の方も多いかと思います。
この格言については、次のように考えることができるとされています。
結果に対して「好子出現の強化」をしているわけです。このように、いたるところに行動分析的な考え方は潜んでいます。
そして、その気になりさえすれば、「人は変わることができる」と思っています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
今泉 叔徳 特定社会保険労務士
パートナー社員
群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。
過去のニュース
ニュースリリース
- 2024.08.22 ニュース
- 【正規職員・契約職員・パート職員募集】リクルート情報
- 2024.11.20 大野事務所コラム
- 介護についての法改正動向
- 2024.11.14 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【未払い賃金請求権と時効期間】
- 2024.11.12 これまでの情報配信メール
- 過重労働解消キャンペーン、2024年12月からの企業型DCおよびiDeCoの変更点について
- 2024.11.13 大野事務所コラム
- PRIDE指標をご存知ですか
- 2024.11.06 大野事務所コラム
- AIは事務所を救うのか?
- 2024.11.05 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(中編)】
- 2024.10.31 これまでの情報配信メール
- 賃金のデジタル払い、令和7年3月31日高年齢者雇用確保措置における経過措置期間の終了について
- 2024.10.30 大野事務所コラム
- 通勤災害における通勤とは③
- 2024.10.23 大野事務所コラム
- 在籍出向者を受け入れる際の労働条件の明示は出向元・出向先のいずれが行うのか?
- 2024.10.23 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【職場や外出先への移動時間は労働時間に該当するか】
- 2024.10.23 これまでの情報配信メール
- 令和6年年末調整における定額減税に関する事務・簡易な扶養控除等申告書について
- 2024.10.16 大野事務所コラム
- 本当に「かぶ」は抜けるのか―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊱
- 2024.10.11 これまでの情報配信メール
- 令和6年版労働経済の分析(労働経済白書)について
- 2024.10.09 大野事務所コラム
- 労働者死傷病報告等の電子申請義務化について
- 2024.10.04 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(前編)】
- 2024.10.02 これまでの情報配信メール
- 労働者死傷病報告の報告事項改正及び電子申請義務化について
- 2024.10.02 大野事務所コラム
- 女性活躍推進法の改正動向
- 2024.09.26 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【社会保険の適用が拡大されます】
- 2024.09.25 大野事務所コラム
- 社会保険の同月得喪と2以上勤務を考える
- 2024.09.18 大野事務所コラム
- 理想のチーム
- 2024.09.11 大野事務所コラム
- 通勤災害における通勤とは②
- 2024.09.11 これまでの情報配信メール
- 令和6年度地域別最低賃金額の改定状況について・大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドラインについて
- 2024.09.04 大野事務所コラム
- フレックスタイム制適用時における年次有給休暇の時間単位取得と子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得
- 2024.08.28 大野事務所コラム
- やっぱり損はしたくない!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉟
- 2024.08.31 これまでの情報配信メール
- 「健康保険資格情報のお知らせ及び加入者情報」の送付、マイナンバーカードの健康保険証利用について
- 2024.08.21 これまでの情報配信メール
- 雇用保険基本手当日額および高年齢雇用継続給付等の支給限度額変更・令和7年4月1日以降の高年齢雇用継続給付の段階的縮小について
- 2024.08.21 大野事務所コラム
- ライフプラン手当のDC掛金部分を欠勤控除の計算基礎に含めてよいのか?
- 2024.08.15 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【減給の制裁における労働基準法の制限】
- 2024.08.10 これまでの情報配信メール
- 雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績について等
- 2024.08.07 大野事務所コラム
- 1か月単位の変形労働時間制における時間外労働の清算
- 2024.08.02 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【管理監督者の適正性】
- 2024.07.31 大野事務所コラム
- 健康情報取扱規程の作成は義務⁈②
- 2024.07.24 大野事務所コラム
- ナレッジは共有してこそ価値がある
- 2024.08.01 これまでの情報配信メール
- 2024年 企業の「人材確保・退職代行」に関するアンケート調査 カスタマーハラスメント対策企業マニュアルと事例集
- 2024.07.19 これまでの情報配信メール
- 仕事と介護の両立支援に向けた経営者向けガイドライン
- 2024.07.17 大野事務所コラム
- 通勤災害における通勤とは①
- 2024.07.16 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【振替休日と割増賃金】
- 2024.07.10 大野事務所コラム
- これまでの(兼務)出向に関するコラムのご紹介
- 2024.07.08 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【歩合給に対しても割増賃金は必要か?】
- 2024.07.03 大野事務所コラム
- CHANGE!!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉞