改正育児・介護休業法への対応
こんにちは。大野事務所の深田です。
前々回のコラムでは、育児・介護休業法の改正動向についての全体像をお伝えしましたが、どのような実務対応が今後必要となってくるのかという観点で今回は見ていきたいと思います(コラム執筆時点で改正法案はまだ成立していません)。そこで、「運用の検討」と「規程の改定」の要否という視点で以下に整理します。
施行予定日 |
改正内容 |
現行 |
必要となる実務対応 |
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運用の検討 |
規程の改定 |
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【子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充①】 |
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公布の日から起算して1年6月以内において政令で定める日 |
①妊娠・出産についての申出があったときの制度利用に関する意向確認の面談等の措置にあたっては、当該労働者の家庭の状況に起因して発生し、または発生が予想される職業生活と家庭生活との両立の支障となる事情の改善に資する就業に関する条件に係る意向を確認しなければならないものとする。また、当該意向に配慮しなければならず、意向の内容を理由として当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとする。 |
規定なし |
● |
- |
②3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、始業時刻等の変更、在宅勤務や所定労働時間の短縮など、労働者が選択可能なものを2以上選択して措置を講じることを義務付ける。 ※措置の選択にあたっては、労働組合等の意見を聴かなければならない(現行は規定なし)。 |
措置を講じる努力義務 |
● |
● |
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③制度を利用できるようになる子が3歳になるまでの適切な時期に、労働者に対して制度の説明と取得意向を確認するための面談等の措置を講じることを義務付けるとともに、当該労働者の家庭の状況に起因して発生し、または発生が予想される職業生活と家庭生活との両立の支障となる事情の改善に資する就業に関する条件に係る意向を確認しなければならないものとする。また、当該意向に配慮しなければならず、意向の内容を理由として当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとする。 |
規定なし |
● |
- |
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【子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充②】 |
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2025年4月1日 |
④3歳に満たない子を養育する労働者について、所定労働時間短縮措置が業務の性質上困難な場合の代替措置の一つに在宅勤務を加えることとする。 |
規定なし |
● |
必要に応じて |
⑤3歳に満たない子を養育する労働者に関して事業主が講じる措置(努力義務)に、在宅勤務を加えることとする。 |
規定なし |
● |
必要に応じて |
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⑥所定外労働の免除を小学校就学前まで請求可能とする。 |
3歳に満たない子が対象 |
- |
● |
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【子の看護休暇制度の見直し】 |
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2025年4月1日 |
⑦感染症に伴う学級閉鎖等や子の行事参加(子の入園式、卒園式および入学式を対象)にも利用できるようにする。 |
取得事由は、「負傷し、もしくは疾病にかかった当該子の世話をするために、または当該子に予防接種や健康診断を受けさせるため」 |
- |
● |
⑧取得事由の拡大に伴い、名称を「子の看護等休暇」に見直す。 |
- |
- |
● |
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⑨請求できる期間は、小学校3年生修了時までとする。 |
請求できる期間は、小学校就学の始期に達するまで |
- |
● |
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⑩労使協定による適用除外の仕組みを廃止する。 |
継続して雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定によって対象から除外することができる |
- |
● 労使協定の再締結も必要 |
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【育児休業取得状況の公表義務の対象となる企業の拡大】 |
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2025年4月1日 |
⑪男性の育児休業取得率の公表義務の対象を拡大し、常用労働者数300人超の事業主に公表を義務付ける。 |
常用労働者数1,000人超の事業主が対象 |
● |
- |
【家族の介護の必要性の申出をした労働者に対する個別の周知等および環境整備】 |
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2025年4月1日 |
⑫家族の介護の必要性に直面した労働者が申出をした場合に、事業主が両立支援制度等に関する情報を個別に周知し、意向を確認することを義務付ける。 また、労働者が申出をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとする。 |
規定なし |
● |
- |
⑬介護保険の第2被保険者となる40歳のタイミング等の効果的な時期に、事業主が労働者に対して、介護に関する両立支援制度の情報を記載した資料等を配布する等の情報提供を一律に行うことを義務付ける。 |
規定なし |
● |
- |
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⑭介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われれるようにするため、研修の実施や相談体制の整備などの措置を講じなければならないものとする。 |
規定なし |
● |
- |
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⑮労使協定による介護休暇の適用除外の仕組みを廃止する。 |
継続して雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定によって介護休暇の対象から除外することができる。 |
- |
● 労使協定の再締結も必要 |
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【仕事と介護の両立支援の強化】 |
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2025年4月1日 |
⑯要介護状態にある対象家族を介護する労働者に関して事業主が講じる措置(努力義務)に、在宅勤務を加えることとする。 |
規定なし |
● |
必要に応じて |
各改正内容については、育児・介護と仕事との両立支援の観点からは趣旨が比較的明白であると考えられますが、労働政策審議会による建議(労審発第1556号 令和5年12月26日)における資料の中で、今般の法改正に対する理解を深める上で参考となる箇所をご紹介します。
【改正内容②について】
子の年齢に応じて、柔軟な働き方を活用しながらフルタイムで働くことに対するニーズも増していくことから、仕事と育児との両立の在り方やキャリア形成への希望に応じて、労働者が柔軟な働き方を活用しながらフルタイムで働ける措置も選ぶことができるようにすることが適当である。
【改正内容⑫~⑭について】
・両立支援制度を利用しないまま介護離職に至ることを防止するために、仕事と介護の両立支援制度の周知や雇用環境の整備を行うことが適当である。
・介護に直面した労働者が離職せずに仕事と介護の両立を実現することは、企業・労働者双方にとって重要であることから、労働者に対して情報を届けやすい主体である、個々の企業による情報提供を促していくことが適当である。
・労働者の仕事と育児の両立のため、育児・介護休業法では、子の年齢に応じた労働者の権利や事業主の措置義務が一律に定められているが、個々の労働者の子や各家庭の状況から、それだけでは両立が困難となる場合もある。例えば、障害児・医療的ケア児を育てる親やひとり親家庭等が該当すると考えられるが、労働者の離職を防ぐ観点から、事業主に対しては、可能な範囲での配慮を求めることが適当である。
以上、今後の実務対応に向けた手掛かりとなれば幸いです。
執筆者:深田
深田 俊彦 特定社会保険労務士
労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員
社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。
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