小さなことからコツコツと―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉜
こんにちは。大野事務所の今泉です。
新年度を迎えるにあたって、新たな目標を掲げた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
目標を達成するためには、いきなり目標に飛びつくのではなく、目標に向かって地道に努力を積み重ねることが大切ですよね。
その方法として、現時点で達成可能な小さな目標に分解し、それが安定して達成できるようになった後に目標を少しずつ上げていき、最終目標に到達するような道筋を描いていく、ということが考えられます。
これをシェイピングといいますが、これを上手にやっていくポイントとして、次のものが挙げられています。
①即時強化
②目標は少しずつ上げる
③挫折した場合は目標を引き下げる
①は、シェイピングされた目標が1つ達成できたらすぐに好子を提示する、ということです。「即時」がポイントで、このことは過去にもお伝えしてきました。
②は、目標を急に引き上げると挫折するおそれが高くなるから、というのがその理由です。
また面白いのは③で、例えば野球のバットスイングでいえば、ピッチャーの投げるボールを10回連続バットに当てる、という目標を立てたとして10本連続が難しければ、5本、7本としていく、ということです。
できない目標にこだわり続けるのではなく、一度戻ってやり直す、ということですね。
前回チェイニングについて説明しましたが、このシェイピングと何が違うのか、というと、前者は行動群を一連の動作として行うあるいは一貫して行うためのものです。一方、後者はより難しい行動(高い目標)を習得させるために補助的な行動(小さな目標)から始める、ということです。したがって、シェイピングによってトレーニングされた行動の集まりをチェイニングによってできるようにする、ということもあるでしょう。
さて、人事労務の話題で「目標」というと「目標(による)管理(MBO)」を思い浮かべてしまいます。目標管理は「組織の方向性を踏まえた目標設定を行うことで、組織と個人の目標をリンクさせ、自律的に仕事をさせることを目的としたマネジメント」ですが、うまく機能しない、という話もよく耳にします。
その原因としては様々なものがあるのでしょうが、目標の立て方も一つの問題だと思います。一気通貫性に欠けるというか、組織目標と個人目標の紐付けがなされていない、といったことです。これは個人の価値観が多様化した結果、キャリアやライフスタイルに対する考え方も人それぞれ、という現状認識に至っていないのだろうと推測されます。
そうだとした場合、組織の目標と個人の価値観の摺り合わせが必要となります。
所属する組織の位置づけを明確にし、どのような役割を期待されているのか、仕事の意義等をはっきり伝えることで納得感をもって行動してもらえるためのコミュニケーションをとらなければなりません。
そして、一つの目標が達成できたらより高次の目標へ、といったプランニングの支援もポイントでしょう。
野球の例でいえば、実際のゲームでは投げられたボールを打つわけですので、本人の自主性のみに任せていると、いきなりピッチャーが投げる球を打つ練習をしがちです。ですが、動いているボールをバットに当てるよりは、止まっているボールを対象とした方が難易度は低い。なので、そのことに気づかせ、そのレベルの練習でまずフォームを固める、ということをしっかり説明してトレーニングさせることが大切なのでしょう。
ちなみに、私はこの原稿を書いている時点で脚をケガしていて、まだ歩くのも少々つらいのですが、「以前のように歩く」という行動を行うため、痛みを弱める、弱まったら小さい歩幅でチョコチョコ歩く(歩かざるを得ませんが)、それができるようになったら歩幅を大きくしスピードを上げる、という感じでシェイピングしました。
皆様、くれぐれもケガにはお気を付けください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
今泉 叔徳 特定社会保険労務士
パートナー社員
群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。
過去のニュース
ニュースリリース
- 2024.07.03 大野事務所コラム
- CHANGE!!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉞
- 2024.06.26 大野事務所コラム
- 出生時育児休業による社会保険料免除は1ヶ月分?2ヶ月分?
- 2024.06.19 大野事務所コラム
- 改正育児・介護休業法への対応(規程・労使協定編)
- 2024.06.17 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【社員への貸付金や立替金を給与で相殺できるか】
- 2024.06.12 大野事務所コラム
- 株式報酬制度を考える
- 2024.06.07 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【振替休日と代休の違い】
- 2024.06.05 大野事務所コラム
- As is – To beは切り離せない
- 2024.05.29 大野事務所コラム
- 取締役の労働者性②
- 2024.05.22 大野事務所コラム
- 兼務出向時に出向元・先で異なる労働時間制度の場合、36協定上の時間外労働はどう考える?
- 2024.05.21 これまでの情報配信メール
- 社会保険適用拡大特設サイトのリニューアル・企業の配偶者手当の在り方の検討について
- 2024.05.17 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【法的に有効となる定額残業制とは】
- 2024.05.15 大野事務所コラム
- カーネーションと飴(アメ)―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉝
- 2024.05.10 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【算定基礎届(定時決定)とその留意点(後編)】
- 2024.05.08 大野事務所コラム
- 在宅勤務手当を割増賃金の算定基礎から除外したい
- 2024.05.01 大野事務所コラム
- 改正育児・介護休業法への対応
- 2024.05.11 これまでの情報配信メール
- 労働保険年度更新に係るお知らせ、高年齢者・障害者雇用状況報告、労働者派遣事業報告等について
- 2024.04.30 これまでの情報配信メール
- 令和4年労働基準監督年報等、特別休暇制度導入事例集について
- 2024.04.30 これまでの情報配信メール
- 所得税、個人住民税の定額減税について
- 2024.04.30 これまでの情報配信メール
- 現物給与価額(食事)の改正、障害者の法定雇用率引上等について
- 2024.04.24 大野事務所コラム
- 懲戒処分における社内リニエンシー制度を考える
- 2024.04.17 大野事務所コラム
- 「場」がもたらすもの
- 2024.04.10 大野事務所コラム
- 取締役の労働者性
- 2024.04.08 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【算定基礎届(定時決定)とその留意点(前編)】
- 2024.04.03 大野事務所コラム
- 兼務出向時の労働時間の集計、36協定の適用と特別条項の発動はどう考える?
- 2024.03.27 大野事務所コラム
- 小さなことからコツコツと―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉜
- 2024.03.21 ニュース
- 春季大野事務所定例セミナーを開催しました
- 2024.03.20 大野事務所コラム
- 退職者にも年休を5日取得させる義務があるのか?
- 2024.03.15 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【2024年4月以降、採用募集時や労働契約締結・更新時に明示すべき労働条件が追加されます!】
- 2024.03.21 これまでの情報配信メール
- 協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率、雇用保険料率、労災保険率、マイナンバーカードと保険証の一体化について
- 2024.03.26 これまでの情報配信メール
- 「ビジネスと人権」早わかりガイド、カスタマーハラスメント防止対策企業事例について
- 2024.03.13 大野事務所コラム
- 雇用保険法の改正動向
- 2024.03.07 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【専門業務型裁量労働制導入の留意点(2024年4月法改正)】
- 2024.03.06 大野事務所コラム
- 有期雇用者に対する更新上限の設定と60歳定年を考える
- 2024.02.28 これまでの情報配信メール
- 建設業、トラック等運転者、医師の時間外労働の上限規制適用・令和6年度の年金額改定について
- 2024.02.28 大野事務所コラム
- バトンタッチ
- 2024.02.21 大野事務所コラム
- 被扶養者の認定は審査請求の対象!?
- 2024.02.16 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【派遣労働者の受入れ期間の制限〈後編〉】
- 2024.02.14 大野事務所コラム
- フレックスタイム制の適用時に一部休業が生じた場合の休業手当の考え方は?
- 2024.02.16 これまでの情報配信メール
- 令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A 等