消去⇒バースト!!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉙
こんにちは。大野事務所の今泉です。空が高くなりましたね。
さて、前回は話が逸れましたが、前々回まで「よい行動をもっとさせるには」あるいは「よくない行動をやめさせるには」ということについて、「強化」と「弱化」のお話をしてきました。ですが、なぜこのようなお話をしてきたか、ということにこれまで触れていませんでした。
その理由としては、こういった行動に対する一定の傾向を知っていると、マネジメント、特に人事労務関連のマネジメントに効果的だと思ったからです。例えば、とあるプロジェクトで大きな貢献をした者に対して高い評価をつければもっとやる気が出るでしょうし、会社にとってデメリットがあることを行った者に嫌なことが起これば、その行動をしなくなる、といったことです。もちろん、ことはそう単純ではありませんが、日頃のマネジメントにおいて、ヒントとなるような考え方であることは事実だと思います。
ここで強化と弱化について、まとめると次のような表が出来上がります。
|
起こる |
なくなる |
良いこと |
強化 |
弱化 |
嫌なこと |
弱化 |
強化 |
さて、もう一つ、「強化」と「弱化」以外に「行動をした直後に、何も変わらないとその行動をしなくなる。」という原理があります。これを消去といいますが、例えば、知り合いがこちらに気付いていない状況で挨拶をしたとすれば、これまでは気付いてくれていたのに、今回は挨拶をしても気付いてくれなかった(無視された)として、これが続くと挨拶をしなくなっていきます。つまりは、このようなことです。
ちなみに、消去の例をChat GPTで生成してみると、、、
ペットのしつけ: ペットのしつけにおいても、消去の概念が適用されます。例えば、犬がテーブルに飛び上がって食事をねだる行動を考えてみましょう。以前は家族が食べ物を与えたため、この行動が強化されました。しかし、家族が食事中に犬に食べ物を与えないようにし、その行動に対する報酬を削除すると、犬の行動は減少するでしょう。 |
というものが出てきました。賢いですね。。。
さて、消去について、これまでと同様に図示すると次のようになります。
ところで、挨拶の件にしろ、ペットのしつけにしろ、たった1回このようなことが発生したからといって、次回からすぐに挨拶しなくなるとか、食事をねだらなくなる、というわけではありません。次回は大声で挨拶してみるとか、何回か声かけてみるとか、食事をしつこくねだるようになるとか、そういった行動をとるのが自然ですよね。
つまり、「消去」が行われ始めると、一時的に行動がエスカレーションすることになります。これを消去バーストといいます。消去バーストも様々な場面で起こり得るもので、身近なところでいえば「自動販売機のボタンを押しても缶コーヒーが出てこなかった場合、何度も何度もボタンを押してみる。」「ボールペンで字を書いていたが、途中からインクが出なくなったので、グルグルとペンを動かしてみる。」といったものもそうだとされます。
これもChat GPTで生成してみたところ、、、
例: 具体的な例として、子供がデパートでおもちゃをねだる行動を考えてみましょう。以前は親がおもちゃを購入して子供に与えていた場合、おもちゃをねだる行動が強化されていました。しかし、ある日のこと、親がおもちゃを買わずに通り過ぎることに決めた場合、子供は最初はより頻繁におもちゃをねだるかもしれません。しかし、親が一貫しておもちゃを買わないことで、子供のおもちゃをねだる行動は減少するでしょう。 |
ということです。凄いですね。。。
消去は「その行動をしなくなる」というところから弱化と同じ効果となりますが、嫌なことが起こるわけではなく、行動に伴って何も起こらないところが異なるところです。
また、注意しなければならないことは、消去バーストが起こったときにそれに対して反応してしまったりすると、さらに強化されてしまって、行動をやめるどころか、その行動をやり続けることになってしまう、というところです。上記の例でいえば、ねだる子供に親が反応しておもちゃを買ってあげてしまうと、「ねだればおもちゃを買ってもらえる」と学習しますので、その行動をやり続ける結果となってしまうことになります。
逆に、スポーツや仕事などで今まで上手くいっていた方法が通用しなくなったとき、再び上手くいきたい、成功したいと思うので試行錯誤したり、ガムシャラになったりして課題に取り組み、克服したいと考えます。
これを言い換えると、今まで上手くいっていた(強化)⇒通用しなくなった(消去)⇒試行錯誤やガムシャラ(消去バースト)となります。
そうだとすると、我々は、消去バーストを繰り返し、課題を克服していくことによって成長していく、ということができそうですね。
ここで重要なのは、それまでに強化があった、つまり成功体験を積んでいた、ということで、これがなければ単に無謀な挑戦になってしまうということです。成功したという経験があるからこそ、さらに頑張れる、というわけです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
今泉 叔徳 特定社会保険労務士
パートナー社員
群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。
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