TOP大野事務所コラム雨が降れば傘をさす―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉗

雨が降れば傘をさす―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉗

こんにちは。大野事務所の今泉です。

じめじめしてますね。。。

 

さて、前回は「ある行動の直後に、良いことが起きれば、その行動が増える」パターンの「強化」についてのお話でしたが、もう一つ「ある行動の直後に、嫌なことが無くなれば、その行動が増える」パターンもあるとお伝えしていました。

 

 

梅雨時は雨の多い日が続きますが、雨が降ってきたら傘をさします。傘をさせば「ビショビショに濡れてしまう」という嫌なことが無くなります。ですので、雨が降ったら傘をさすようになります。また、よくいわれる例として、上司に怒られた、という嫌なことが起こった場合に、「謝る」ことで上司の説教が終わった(嫌なことがなくなる)とすると、再び上司に怒られたとき、「謝る」という行動を繰り返します。このようなものが、「ある行動の直後に、嫌なことが無くなれば、その行動が増える」パターンです。

ところで、後者の例では「謝る」という行動が強化されているわけですが、最初は真摯に反省していたとしても、毎回説教を喰らっているうちに「慣れて」きて、「とりあえず謝っとけばいいや」、「さっさと謝って終わりにしよう」となることも往々にしてあると思います。それを上司が気づくと、さらに厳しく怒る、説教をするという行動に繋がりかねません。終いには「ハラスメント」となってしまう、というケースもあるでしょう。

 

このように、嫌なこと、というのは慣れてしまう、あるいはやり過ごしてしまいがちなものです。触らぬ神に祟りなし、ですね。

 

一方、上司に相談しなければならないが、相談したところ煙たがられた、というようなケースがあると、相談に行きづらくなりますよね。このようなことが続けば、上司に相談しなくなっていきます。また、会議中に発言した際に、まったく取り上げられない、無視されるということがあると、次から発言しづらくなる、といったこともあります。

 

つまり、「ある行動の直後に、嫌なことが発生すると、その行動をしなくなる」というパターンが発生します。これは「弱化」といわれます。

 

このことは以前お話しした「心理的安全性」にもつながることで、心理的安全性とは弱化を引き起こさないための装置といえるような気がします。

 

この弱化については、新しいことをしなくなるというデメリットももたらします。いつも上司に煙たがれていると、上司に煙たがれないような行動しかとらなくなってきます。ご機嫌伺いを取ることばかりに思いが及んでしまう結果、イノベーティブなアイデアや建設的意見が出にくくなってしまう、ということですね。

 

その一方で、弱化することが必要な場面もあります。

最も分かりやすいのは刑罰法規であり、行為を起こすことで罰則が科されると分かっていれば、その行為を慎むことになります。労基法も罰則付きで使用者に遵守義務を負わせる刑罰法規の性質を有するのは、ご存知のところと思います。起こって欲しくない状況を未然に防ぐ、つまり予防のためのシステムや対応には有効といえるでしょう。

 

ところで、「ある行動の直後に、良いことが起きなければ、その行動をしなくなる」ということも考えられます。これも「弱化」です。遊んでいる子供に「勉強しなさい!!」と言って勉強させると(行動の直後)、当然遊べなくなります(良いことが起きない)。

よって、勉強しなくなるので、子どもに「勉強しなさい!!」と言ってはいけない(と一般に言われている)所以です。

 

 

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

今泉 叔徳

今泉 叔徳 特定社会保険労務士

パートナー社員

群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2024.12.02 ニュース
【急募!正規職員・契約職員・パート職員】リクルート情報
2025.01.22 大野事務所コラム
マイナポータル上での離職票交付サービス開始について
2025.01.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【介護と両立できる働き方とは】
2025.01.16 これまでの情報配信メール
マイナポータルにおける離職票直接送付サービス開始について
2025.01.15 大野事務所コラム
雇用保険法の改正
2025.01.08 大野事務所コラム
企業による奨学金返還支援制度を考える
2024.12.25 大野事務所コラム
来年はもっと
2024.12.20 ニュース
書籍を刊行しました
2024.12.20 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【労働条件の不利益変更】
2024.12.20 ニュース
年末年始休業のお知らせ
2024.12.18 大野事務所コラム
【通勤災害】通勤経路上にないガソリンスタンドに向かう際の被災
2024.12.11 大野事務所コラム
【賃金のデジタル払いの今と今後の広がりは?】
2024.12.09 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(後編)】
2024.12.04 大野事務所コラム
X.Y.Z―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊲
2025.01.08 これまでの情報配信メール
令和6年度年末年始無災害運動・高年齢労働者の安全衛生対策について
2024.11.30 これまでの情報配信メール
令和6年12月2日以降は健康保険証が発行されなくなります・養育期間標準報酬月額特例申出書の添付書類の省略について
2024.11.27 大野事務所コラム
産前産後休業期間中の保険料免除制度は実に厄介
2024.11.20 大野事務所コラム
介護についての法改正動向
2024.11.14 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【未払い賃金請求権と時効期間】
2024.11.22 これまでの情報配信メール
データでみる70歳以上の定年・継続雇用制度の導入効果と工夫、大野事務所モデル規程・協定一部改定のお知らせ
2024.11.12 これまでの情報配信メール
過重労働解消キャンペーン、2024年12月からの企業型DCおよびiDeCoの変更点について
2024.11.13 大野事務所コラム
PRIDE指標をご存知ですか
2024.11.06 大野事務所コラム
AIは事務所を救うのか?
2024.11.05 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(中編)】
2024.10.31 これまでの情報配信メール
賃金のデジタル払い、令和7年3月31日高年齢者雇用確保措置における経過措置期間の終了について
2024.10.30 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは③
2024.10.23 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【職場や外出先への移動時間は労働時間に該当するか】
2024.10.23 これまでの情報配信メール
令和6年年末調整における定額減税に関する事務・簡易な扶養控除等申告書について
2024.10.16 大野事務所コラム
本当に「かぶ」は抜けるのか―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊱
2024.10.11 これまでの情報配信メール
令和6年版労働経済の分析(労働経済白書)について
2024.10.09 大野事務所コラム
労働者死傷病報告等の電子申請義務化について
2024.10.04 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(前編)】
2024.10.02 これまでの情報配信メール
労働者死傷病報告の報告事項改正及び電子申請義務化について
2024.10.02 大野事務所コラム
女性活躍推進法の改正動向
2024.09.26 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【社会保険の適用が拡大されます】
2024.09.25 大野事務所コラム
社会保険の同月得喪と2以上勤務を考える
2024.09.18 大野事務所コラム
理想のチーム
2024.09.11 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは②
2024.09.11 これまでの情報配信メール
令和6年度地域別最低賃金額の改定状況について・大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドラインについて
2024.09.04 大野事務所コラム
フレックスタイム制適用時における年次有給休暇の時間単位取得と子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得
2024.10.23 大野事務所コラム
在籍出向者を受け入れる際の労働条件の明示は出向元・出向先のいずれが行うのか?
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop