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労働条件の書面明示

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

ご承知のとおり、労働基準法やパートタイム・有期雇用労働法では雇入れ時における労働条件の書面明示義務が規定されており、「労働条件通知書」や「雇用契約書」によって対応されていることと思います。

 

一昔前であれば、労働基準監督署の臨検の中で労働条件通知書等の内容を確認されることもよくありましたが、最近では長時間労働の有無などが焦点となりやすいこともあってか、労働条件明示について確認される場面は減ったように感じます。

 

以上は労働者に対する個別の労働条件明示についてですが、そもそもの労働条件を定める就業規則においても、いわゆる「絶対的必要記載事項」として記載が必須となる事項があります。

この点に関連して、1箇月単位の変形労働時間制によって勤務する上でのシフトパターンを就業規則にすべて記載していなかったことを理由として、変形労働時間制の適用を無効とする裁判例が昨年出ています(名古屋地裁令和41026日判決)。

 

正直なところ、私どもが行っている労務診断でも、1箇月単位の変形労働時間制についての就業規則での規定で始業・終業時刻が明記されていない場合に、少なくとも原則となる始業・終業時刻の記載は必要である旨のご指摘はしていたものの、すべてのパターンを記載するようにとのご指摘までは行っていませんでした。すべてのパターンを記載するという考え方は従来からの裁判例でも見られていたようですので、自戒の念を持って本裁判例を受け止めた次第です。なお、実際に作成することとなる勤務表に関しては、その作成手続きや周知の方法(作成や通知を行う時期等)を就業規則に明記することも重要となります。

 

さて、労働条件の書面明示義務に関しては、来年41日からの改正が決まっており(労働基準法施行規則の改正)、以下のとおり明示事項が追加されます。

 

 

現行

改正後

就業の場所および従事すべき業務に関する事項

就業の場所および従事すべき業務に関する事項(就業の場所および従事すべき業務の変更の範囲を含む。)

有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項

有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間または有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。)

(新設)

無期転換申込権を得ることとなる有期労働契約の締結時には、通常の労働条件明示事項に加えて以下の事項。

・無期転換を申し込むことができる旨

・無期転換後の労働条件

 

このうち①は、従来「人事権の裁量の範囲」として位置付け得る内容だったことを考えますと、時代の変化を感じさせる改正内容です。ある程度包括的な内容での明示がどこまで許容されるのかが現時点では判然としませんが、改正点③に照らしても説明責任の重みが増してきていると言えるのではないでしょうか。なお、②については、現状でも対応がなされていることが多いと思われ、雇止めの有効性との兼ね合いからも当然に明示すべき事項であると考えられます。

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

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