育児休業と社会保険料免除の再確認
こんにちは。大野事務所の深田です。
少子化が叫ばれて久しいですが、1992年に出された「平成4年度国民生活白書」において、「少子社会の到来、その影響と対応」という副題の下に、少子社会の現状や課題について政府の公的文書としては初めて解説・分析をしたとされています。近時の動向としては、2022年の出生数が前年比5.1%減の79万9728人(厚生労働省の人口動態統計(速報値))で、1899年の統計開始以来初めて80万人を下回ったということです。
そのような切迫した状況の中、こども家庭庁が発足した本年4月1日の前日には、「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」が公表されました。
同試案では、「男性の育休取得率について、現行の政府目標(2025年までに30%)を大幅に引き上げる。」とあり、具体的には民間企業において2025年までに50%、2030年までに85%という数字が掲げられています。また、「次世代育成支援対策推進法の事業主行動計画に男性の育休取得を含めた育児参加や育休からの円滑な職場復帰支援、育児のための時間帯や勤務地への配慮等に関する目標・行動を義務付けるとともに、育児・介護休業法における育児休業取得率の開示制度の拡充を検討する。」ともあり、企業としても一層の取り組みが求められることになりそうです。
さて、昨年は育児休業関係の大きな法改正があり、私どものお客様を見ている限りでは男性の育休取得が進みつつあるようにも感じますが、育休を取得されようとする方は社会保険料免除のことがやはり気になるようです。これまでの私のコラムでも触れてきたところではありますが、社会保険料免除の仕組みで押さえおくべきと考える2点を、改めてお伝えしたいと思います。
【①「14日以上」の要件は、あくまで同月内で育休開始・復職した場合のものです】
標準報酬月額の保険料免除について、「育児休業等期間が14日以上」という要件が昨年10月から新たに設けられましたが、これはあくまで同月内で育休開始・復職した場合に適用されるものです。よって、月を跨いでの育休の場合には関係がないものとなります。
【②月を跨いでの育休では、月末に休業している場合の当該月に係る保険料が免除されます】
上記①以外で標準報酬月額の保険料が免除されるのは、月末に休業している(休業期間が月を跨いでいる)場合です。免除の対象となるのは、当該月末が属する月に係る保険料ですが、これは要するに従来通りの取り扱いです。月末を休業期間に含めた数日間の育休でも保険料免除となることがかねてより問題視されていたわけですが、標準報酬月額の保険料については数日間の育休であっても、休業期間に月末が含まれていれば免除されることとなります。
取り扱いに変更があったのは賞与に係る保険料の免除に関してでして、育休の期間が暦で1か月超の場合に限り免除の対象となります。「暦で1か月超」ですので、結果として必ず月を跨ぐこととなるわけですが、保険料免除の対象月の考え方は標準報酬月額に係る保険料の場合と同様ですので、休業している月末が属する月に支給された賞与の保険料が免除されるということになります。
以上は基本的な事項ではありますが、これまでお客様からお受けしてきたご質問の状況を踏まえまして、改めて整理させていただきました。
執筆者:深田
深田 俊彦 特定社会保険労務士
労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員
社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。
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