協調から協働へ―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉕
こんにちは。大野事務所の今泉です。
春爛漫ですね。暖かくなりました。
さて、これまでコンフリクトの発生原因、コンフリクトが発生したときの解決モード、特に相手をリスペクトし、よりよいソリューションを築き上げる建設的な対話を目指す協調モードについて説明してきました。そして、前向きな意見対立が起こる、ということは活発に意見が交換されているということもでき、様々なアイディアや主張が出されているということでもあるため、このような意見対立が発生する組織は、むしろ健全な組織であるということもできるのではないか、と提起してきました。
さて、ここで活発な意見が交わされる中、協調モードによって解決策を打ち立てることができた!めでたしめでたし・・・というわけにはいかないですよね。
というのは、これまでのお話は解決策をいかに「Win-Win」なものとするかに焦点を当ててきましたが、この後は実際に策定された解決策を実行していく必要があります。当たり前のことですが、実行に移せなければ、物事は解決しません。
コンフリクトは、1対1あるいは組織対組織のように2項対立がベースとなりますが、当事者間で解決策を実行することができる場合には、もちろん問題ありません。ただ、当事者間のみでは実行できない場合も多くあることでしょう。
例えば、Aさんが年次有給休暇を取得する予定の日に、緊急で業務が発生したとB部長から連絡が入ったとき、もちろんAさん自ら年休を取り消す(服従)、時季変更権を行使する(強制、ただし、現実的には行使するのはハードルが高いですね。)等方法はあるにせよ、代わりの人材であるCさんにお願いする、という方法が思い浮かびます。
このとき、CさんがOKを出してくれれば何事もなく解決することが予想されます。
つまり、解決案の実行にあたっても、当事者はもちろんのこと第三者やチームメンバーも含め、お互いに協力して課題に取り組んでいく、という姿勢が望ましいものであることは論を待たないと思います。このことをここでは「協働」する、といいたいと思います。
実際に協調モードと協働は重なる部分も多いかもしれませんが、「協働」というと地方行政・地方自治というイメージを持たれるかもしれません。「事業者及び各種団体との協働によるまちづくり」などはよく使われるフレーズでしょう。
このような協働できるための要素としては、次のようなものがあると考えます。
① 解決策に合意できる
そもそも納得し、合意できるような解決策でなくては第三者、チームメンバーの力を借りることは難しいでしょう。この場面ではコンフリクト・マネジメントのスキルが活かされるところです。
② 利他的思考を持てる
利他的思考とは「社会通念に照らして、困っている状況にあると判断される他者を援助する行動で、自分の利益を主な目的としない行動」をとる思考で、自分の利益よりも他人の利益を優先する考え方」とされます。
③ 自分事として捉えられる
いわゆる当事者意識というものです。常に責任感を持って対応し、率先して仕事にコミットする姿勢であり、「親身になって」ともよくいわれます。
④ 対話ができる
対話については、本コラム第4回に掲載しました。
実行というフェーズにおいて、「解決案は作ったから後はよろしくね!」というのではせっかくの意見交換によって育まれた協調的なものが水泡に帰す可能性もあります。非常にもったいない、残念な結果に終わることも考えられます。ときには周りを巻き込まないと有益な解決に導けないケースもあるでしょう。
そのような場合には協調から協働へシフトチェンジして事に当たる、ということはとても大事なアクションだと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。次回からは、また新たな話題に移りたいと思います。

今泉 叔徳 特定社会保険労務士
パートナー社員
群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。
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