今後の法改正動向
こんにちは。大野事務所の深田です。
昨年12月に「2023年度に施行される法改正」をコラムで取り上げましたが、2023年度に施行される法改正のボリューム自体は、例年に比べて限られたものとなっています。
また、現在開会中の通常国会では、実務に直接影響のあるような労働関係法令改正法案の提出は予定されていない模様です。そうしますと、2024年度も法改正に関する実務対応が落ち着いているかといえば、そう安心してもいられません。
まず、以前に改正法が成立していて2024年度に施行されるものがあります。また、国会での法改正ではなく省令等の改正によって実施されることが見込まれている事項もありますので、注意が必要です。
では、具体的に確認していきましょう。
前者については、時間外労働の上限規制が2019年度から施行された際、規制の適用が一部の事業・職種で猶予されましたが、その適用猶予措置が2023年度をもって終了(2024年4月1日から規制適用)となります。ただ、必ずしも原則通りの規制が適用されるわけではなく、以下のとおりです。
事業・職種 |
適用される時間外労働上限規制の内容 |
工作物の建設の事業 |
災害時における復旧および復興の事業を除き、上限規制がすべて適用。 ただし、災害時における復旧および復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満・複数月平均80時間以内の規制は適用されない。 |
自動車運転の業務 |
特別条項適用時の年間時間外労働の上限は960時間(特別条項年6回までの規制は適用されない)。 時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満・複数月平均80時間以内の規制は適用されない。 |
医師 |
特別条項適用時の年間時間外労働(休日労働を含む)の上限が960時間または1860時間(特別条項年6回までの規制は適用されない)。 時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満(例外あり)。複数月平均80時間以内の規制は適用されない。 |
鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業 |
上限規制がすべて適用。 |
一方の後者については、本コラム執筆時点(2023年3月3日)の情報として、以下のとおり挙げられます。
対象法令等 |
施行予定年月日 |
改正事項の概要 |
告示(労働契約法関係) |
2024年4月1日 |
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の一部改正(有期労働契約の締結後、当該有期労働契約の変更または更新に際して、通算契約期間または有期労働契約の更新回数について上限を定め、またはこれを引き下げようとするときは、予めその理由を労働者に説明しなければならないこととする、など。) |
労働基準法施行規則等 |
・労働条件明示事項の追加(「通算契約期間または有期労働契約の更新回数の上限ならびに就業場所・業務の変更の範囲」、「無期転換申込権が発生する契約更新時においては、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件」) ・専門業務型裁量労働制の労使協定事項に制度適用の本人同意を追加 など |
|
・企画業務型裁量労働制指針 ・告示(専門業務型裁量労働制関係) |
・企画業務型裁量労働制指針の一部改正 ・専門業務型裁量労働制の対象業務の追加(銀行または証券会社において、顧客に対し、合併、買収等に関する考案および助言をする業務) など |
以上、ご覧のとおり実務への影響が大きい内容となっていますので、引き続き注視しながら弊所としても情報発信していきたいと考えております。
執筆者:深田
深田 俊彦 特定社会保険労務士
労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員
社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。
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