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配偶者同行(帯同)休職中の社会保険・雇用保険の適用は

こんにちは、大野事務所の土岐です。

 

本日は配偶者同行(帯同)休職中の社会保険・雇用保険の適用について採り上げたいと思います。

 

配偶者同行(帯同)休職とは、一定期間(例えば6ヶ月など)を超える配偶者の海外赴任等の事情があった際、配偶者に同行(帯同)する期間について、一定期間(例えば上限3年など)の休職を認める制度です。休職制度については法律に定めはなく、会社独自の定めとなりますので、休職制度の有無およびその内容は会社が独自に設計できることはご存じの通りかと思いますが、配偶者同行(帯同)休職制度は家庭生活と仕事の両立、人材確保の観点などから、特に大企業において導入されている例が見受けられます。

 

なお、人事院では「有為な国家公務員の継続的な勤務を促進するため、外国で勤務等をする配偶者と外国において生活を共にするための休業制度」として配偶者同行休業制度が設けられています。また、この制度に関するQ&Aも公開されていますので、ご興味のある方はご確認頂ければと思います。

 

さて、この休職中の社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険の適用はどうなるのかについてご質問をいただきましたので、それぞれ見ていきたいと思います。

 

まず、社会保険については次の通達(昭和2639日保文発619号)が参考になります。

 


<通達(抜粋)>

 

健康保険料は法第七十一条第二項により毎月につき各保険者の標準報酬に保険料率を乗じ各保険者よりその負担分を徴収する事になつて居りますが、被保険者が労働協約又は就業規則により雇傭関係は存続するが会社より賃金の支給を停止されたような場合(例えば病気若しくは公職就任又は事故による無給休職の如き)には其の保険料算定の基礎を失い保険料の徴収は不可能となりますが、かかる場合

 

1 被保険者資格を喪失し保険給付を受け得ざる事になるか。

2 前項の場合資格を喪失せしめず保険給付を受けうるものとすれば負担能力なき保険料の合法的処置は如何にすればよいか。

 

————(略)————

 

1 健康保険の被保険者が、労働協約又は就業規則等により雇傭関係は存続するが会社より賃金の支給を停止されたような場合には、箇々の具体的事情を勘案検討の上、実質は使用関係の消滅とみるを相当とする場合例えば被保険者の長期にわたる休職状態が続き実務に服する見込がない場合又は公務に就任しこれに専従する場合等に於ては被保険者資格を喪失せしめるのが妥当と認められる。

 

2 右の趣旨に基き被保険者の資格を喪失することを要しないものと認められる病気休職等の場合は、賃金の支払停止は一時的のものであり使用関係は存続するものとみられるものであるから、事業主及び被保険者はそれぞれ賃金支給停止前の標準報酬に基く保険料を折半負担し事業主はその納付義務を負うものとして取扱うことが妥当と認められる。


 

私傷病休職の場合には、被保険者資格は休職中も継続するのが一般的と思われます。これは上記通達の「2 …(略)…資格を喪失することを要しないものと認められる病気休職等の場合は、賃金の支払停止は一時的のものであり使用関係は存続するものとみられるものである…(略)…」ということから被保険者資格は継続する、という考えによります。こちらに関しては、傷病手当金の支給との関係からも資格を喪失しないことは妥当といえるでしょう。

 

では配偶者同行(帯同)休職の場合はどのように考えるのかという点について、筆者が確認した限りでは、上記通達の他に明確な基準が示されているものは見当たりませんでした。そうなりますと、上記の「1…(略)…箇々の具体的事情を勘案検討の上、実質は使用関係の消滅とみるを相当とする場合…」に該当するか否かを個別に検討することになると考えられます。

 

この点、筆者の関与先様の事例では、「配偶者同行(帯同)休職期間中は給与の支払いがなく、休職が可能となる期間も6ヶ月から最長3年と、長期間の休職といえるので、上記通達に照らし『実質は使用関係の消滅とみるを相当とする場合』に該当すると考えられることから、被保険者資格を喪失することになる」旨、事業所管轄の年金事務所より見解を受けました(※)。

 

この見解に対して、「Aさんは私傷病休職、Bさんは配偶者同行(帯同)休職をそれぞれ6ヶ月取得した場合、Aさんは資格継続、Bさんは資格喪失となるということになりますが、休職期間の長さはポイントではないということでしょうか?」

という問いには、「休職の理由に着目します。私傷病休職の場合には上記通達にある通り、『賃金の支払停止は一時的なもの』で、当該私傷病がなければ就労していたと考えられる一方、配偶者同行(帯同)休職の場合には、上記通達の『実質は使用関係の消滅とみるを相当とする場合』に該当すると考えるのが妥当」とのことでした。

 

ちなみに、人事院の配偶者同行休業制度に関するQ&Aでは、Q11において、配偶者同行休業期間中の給与は支払われないものの、国家公務員共済組合法の適用があることから掛け金を支払う必要がある旨の記載がありますので、社会保険とは考え方が異なるようです。

 

次に、雇用保険については、被保険者の資格取得要件(31日以上の雇用見込みがあること、1週の所定労働時間が20時間以上であること)を満たす場合には、休職中であったとしても、被保険者資格は継続することになります(雇用保険法第6条)。

 

この点、私傷病休職期間中の被保険者資格は継続するのが一般的と考えられるところ、配偶者同行(帯同)休職についても、実際に就労はしていなくとも、雇用契約がある前提において労務提供義務を免除するのが休職制度の趣旨であることに鑑みれば、休職前の雇用契約そのものが変更され、被保険者の資格取得要件を満たさないこととなった場合でない限り、被保険者資格は継続することになるとの事業所管轄のハローワークの見解を受けました(※)。

 

(※)筆者が上記の例において事業所管轄の年金事務所およびハローワークに確認した限りの内容となりますので、個別の事情によっては判断が異なる場合がある点にご注意ください。

 

配偶者同行(帯同)休職中の社会保険・雇用保険の適用については以上となります。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

<参考URL

■人事院 配偶者同行休業制度とは

https://www.jinji.go.jp/doukou/haiguusya.html

 

執筆者:土岐

 

土岐 紀文

土岐 紀文 特定社会保険労務士

第3事業部 部長

23歳のときに地元千葉の社労士事務所にて社労士業務の基礎を学び、その後大野事務所に入所しまして10数年になります。

現在はアドバイザリー業務を軸に、手続きおよび給与計算業務にも従事しています。お客様のご相談には法令等の解釈を踏まえたうえで、お客様それぞれに合った適切な運用ができるようなアドバイスを常に心がけております。

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