e-Gov協定届の改善を希望します
こんにちは。大野事務所の高田です。
毎年3月下旬と9月下旬は、36協定届等の労使協定届の労働基準監督署への届出が集中する時期に当たります。この10月の時期においても、多数の顧問先様の36協定届の届出を代行しました。ここ2年ほどは、私が関与する顧問先様の36協定届の届出は、ほぼe-Govの電子申請に移行していますが、今回は、そのe-Govがなかなか改善されずに困っているという話です。
今更言うまでもありませんが、e-Govによる電子申請の仕組自体は、業務効率化のための非常に有効なツールです。ですので、今回採り上げる協定届の手続きについても、自らが関与する顧問先様は勿論のこと、所内全体ひいては業界や世の中全体が早くオンラインに移行するよう願う気持ちに嘘はありません。しかし、残念なことに現在のe-Govの協定届(今回は特に36協定届を採り上げます)のシステムの仕様や行政の対応には多くの問題があり、オンラインで手続きするメリットが損なわれているのが実状です。今回はe-Govの問題点を忌憚なく挙げていきたいと思いますが、決して行政批判をすることが筆者の意図なのではなく、1日も早く改善して頂きたいと心から願っているからこそのエールだと受け止めて頂ければ幸いです。
1.e-Govの36協定届(各事業場単位/特別条項付)の仕様上の問題
我々社労士が顧問先様の36協定届手続きを代行する際、最も多く利用するのが、いわゆる様式第9号の2(各事業場単位/特別条項付)です。率直に言って、何故これほどまでに入力しづらく作ったのかと感心するほど入力しづらいと感じます。具体的には以下の通りです。
① 様式が横長のため、画面の横スクロールが必要
入力フォームというものは、横幅が画面に収まるようにレイアウトするのが鉄則かと思います。協定届の入力フォームは、ユーザー側の入力しやすさなどまったく考慮されておらず、単に紙の様式を画面上に展開しただけだという気がします。
② 時間外労働の欄が4つあるのに対して休日労働の欄が2つしかない
時間外労働を4種類まで記載できるのであれば、休日労働もそれに揃えるべきです。3種類以上の記載が必要な場合、紙の様式であれば行を追加すれば済みますが、e-Govでは続紙を追加しなければならないというのが非常に面倒です。
③ 数字なのに全角しか受け付けない
労働保険番号、法人番号、郵便番号、電話番号などの数字は、半角で入力する方が一般的な感覚だと思いますが、何故か全角しか受け付けません。
④ 入力フォントサイズが小さくて見にくい
表示フォントサイズがバラバラかつ項目によっては非常に小さなフォントが使われているため、一部、目を近付けるか画面を拡大しないと見にくい箇所があります。
⑤ 意味不明な入力規制がある
「特別延長時間(1箇月、1年)」欄は、「分」の欄にも「0」を入力しなければならなかったり、「特別延長事由」や「特別条項発動手続」の欄は、事由を詳細に記載しているにもかかわらず、その直前のプルダウンから何かを選択しなければならなかったりなど、意図がよく分からない入力規制があります。また、「健康福祉確保措置の具体的内容」欄は、項目の趣旨からすれば入力文字数は必然的に多くなるはずですが、たったの42文字しか入力できないというのは非常に不便です。
⑥ 公文書(会社控)のレイアウトの見た目が悪すぎる
何故公文書のみ縦長レイアウトにしたのかも解せませんが、それにしてもレイアウトのセンスが無さすぎます。どの項目も欄が大きく取ってある割には文字が小さすぎて読みづらいですし、右端の余白がまったく無いせいで、表の右側が切れてしまっているかのように見えます。このような見栄えの悪いものを顧問先様に納品する際には、私の方が申し訳ない気になってしまいます。
⑦ (36協定届ではありませんが)会社控が交付されない手続きがある
専門業務型裁量労働制の協定届や事業場外労働の協定届など、比較的よく利用するものでも、会社控が交付されないものがあります。顧問先様に電子申請を推奨する上で、会社控が交付されないというのは致命的なデメリットですので、早急に対応をお願いしたいです。
※2023/3/13追記
2023年2月末のe-Gov改修により、会社控が交付される手続きが拡充されました。
2.e-Govの運用上の問題
運用上の問題点は1つだけ挙げますが、問題の大きさとしてはこちらの方が深刻です。
① 記入不備や添付書類不足で容赦なく返戻される
36協定届は、協定期間開始日よりも届出が遅れると労働基準法(第32条)違反になってしまいますので、届出遅延は絶対に避けたいところです。とりわけ協定期間開始前ギリギリのタイミングで届け出る場合では、万が一記入不備等で返戻されると再届出の際に遅延になってしまうため、絶対にミスは許されません。しかし、我々も人間ですので、以下のような設定ミスをつい犯しがちです。
・ 申請者情報を取り違える(多数の顧問先様の申請者情報を登録している場合に、別の顧問先様の情報をセットしてしまう)
・ 提出先の管轄労働基準監督署の設定を誤る
・ 社労士の提出代行証明書の添付を忘れる
これに関しては、ミスをする方が悪いには違いないのですが、書面での届出であればよほどのことでなければ返戻などされないのに対して、電子申請の場合は、仕様上の不備があると容赦なく返戻されますので(しかも、届出直後に返戻されるのであればまだしも、何日も経過してから返戻されることがありますので)、e-Govを利用する上での最大のデメリットがこの点だろうと思います。
昨年9月にデジタル庁が発足し、1年が経過しました。元々1年やそこらで劇的に変わるとは思っていませんでしたが、それにしても、e-Govに関しては、使い勝手が悪い状態があまりにも長く放置されすぎだという気がします。政府としてe-Govを本気で普及させる気があるのであれば、是非、それを利用するユーザーの視点で使いやすいものを提供してほしいと切に願います。
執筆者:高田
高田 弘人 特定社会保険労務士
パートナー社員
岐阜県出身。一橋大学経済学部卒業。
大野事務所に入所するまでの約10年間、民間企業の人事労務部門に勤務していました。そのときの経験を基に、企業の人事労務担当者の目線で物事を考えることを大切にしています。クライアントが何を望み、何をお求めになっているのかを常に考え、ご満足いただけるサービスをご提供できる社労士でありたいと思っています。
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