TOP大野事務所コラム「育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A」が公開されました

「育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A」が公開されました

こんにちは。大野事務所の深田です。

 

昨年421日付の私のコラムでは、「育児休業中の保険料免除の仕組みが改正される予定です」として改正の概要をお伝えしましたが、それから早一年、施行日である101日まで半年を切り、「育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A」も331日付で発出されました。そこで、Q&Aの内容も交えながら、改正のポイントを改めて見ていきたいと思います。

 

「育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A

【事務連絡】全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律による健康保険法等の改正内容の一部に関するQ&Aの送付について (mhlw.go.jp)

 

今回の改正では、保険料免除要件を以下の2つに区分し、その上で賞与に係る保険料については、育児休業等の期間が1か月超の場合に限り免除されることとなりました(【図表】ご参照)。

1)育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日が属する月とが異なる場合

2)育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日が属する月とが同一であり、かつ、当該月における育児休業等の日数として厚生労働省令で定めるところにより計算した日数が14日以上である場合

 

                                     【図表】

 

                                        資料出所:厚生労働省「全国厚生労働関係部局長会議」

 

保険料免除要件における上記2区分のうち(1)については、育児休業等の期間に月末が含まれていれば当該月の月次保険料が免除されるということでして、この点は現行の取り扱いと同様です。かたや、賞与に係る保険料については、育児休業等の期間が1か月超の場合に限り免除されるように改正され、この点について「賞与保険料の免除対象外とする1月以下の育児休業等期間の算定については、暦によって計算する(例えば、1116日から1215日までの育児休業等の場合、育児休業等期間はちょうど1月であるため、賞与保険料の免除の対象外となる。)。」(Q&A 14)とされています。更に、「1月超の育児休業等については、従来通り月末時点に育児休業等を取得しているかどうかで保険料免除を判断するため、育児休業等期間に月末が含まれている月に支給された賞与に係る保険料を免除することとなる。」(同)点も押さえておく必要があります。以上を踏まえますと、保険料免除要件における上記2区分のうち(2)の場合には、育児休業等の期間に月末を含まず、また育児休業等の期間が1月超にはなり得ないことから、賞与に係る保険料は免除されません。

 

さて、現行の保険料免除の仕組みは、月末に育児休業等をしているかどうかに左右されるという点においてバランスの悪さがあったことから、月途中で14日以上の育児休業等をしている場合も月次保険料免除の対象とされることとなったのが、今回の改正における大きな変更点です。

ここで改めて留意しておくべきことは、新たに設けられた「14日以上」という要件は、あくまで月途中での育児休業等の場合(育児休業等の開始日と終了日の翌日とが同一の月内である場合)に適用されるものであるという点です。改正法を踏まえれば、当然と言えば当然の話ではあるのですが、そこを念頭に置いておかないと、「Q&A 7」のような疑問に繋がるところです。

7.前月以前から取得している育児休業等について、最終月の月末まで育児休業等を取得しておらず、最終月に14日以上の育児休業等期間がある場合、最終月の保険料は免除対象になるのか。

 

(答)

今般設ける14日の要件による免除の仕組みは、開始日と終了予定日の翌日が同一月に属する育児休業等についてのみ適用し、月末を含む育児休業等(開始日と終了予定日の翌日が異なる月に属する育児休業等)の日数は、14日の要件の適用において考慮しない。したがって、「前月以前から取得している育児休業等」の最終月の保険料は、その月の月末日が育児休業等期間中であるか、その月の月中に当該育児休業等とは連続しない別途の育児休業等(14日以上)を取得している場合にのみ免除となる。

 

14日の要件」を見る上では、「育児休業等日数は、ある育児休業等の開始日から終了予定日までの日数(当該育児休業等が出生時育児休業である場合、開始日から終了予定日までの日数から就業日数を除いた日数)をいい、その間に土日等の休日、有給休暇など労務に服さない日が含まれていても、育児休業等日数の算定に当たり差し引くことはしない(育児休業等日数に含まれる)。」(Q&A 10)とされています。なお、出生時育児休業期間中に日単位ではなく時間単位で就業した場合の取り扱いについては、「Q&A 11」をご参照ください。

 

最後に、本改正は「施行日(令和4101日)以後に開始した育児休業等について適用する。」(Q&A 23)とされています。育児・介護休業法の改正第二弾として、育児休業の分割取得や出生時育児休業制度などが同じく令和4101日から施行されますが、育児・介護休業法では施行日以後に開始した育児休業のみを改正法の適用対象としているわけではありませんので(この点の詳細は前回の私のコラムをご参照ください)、この相違についてもご注意いただければと思います。

 

執筆者:深田

深田 俊彦

深田 俊彦 特定社会保険労務士

労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員

社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2024.08.22 ニュース
【正規職員・契約職員・パート職員募集】リクルート情報
2024.11.20 大野事務所コラム
介護についての法改正動向
2024.11.14 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【未払い賃金請求権と時効期間】
2024.11.12 これまでの情報配信メール
過重労働解消キャンペーン、2024年12月からの企業型DCおよびiDeCoの変更点について
2024.11.13 大野事務所コラム
PRIDE指標をご存知ですか
2024.11.06 大野事務所コラム
AIは事務所を救うのか?
2024.11.05 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(中編)】
2024.10.31 これまでの情報配信メール
賃金のデジタル払い、令和7年3月31日高年齢者雇用確保措置における経過措置期間の終了について
2024.10.30 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは③
2024.10.23 大野事務所コラム
在籍出向者を受け入れる際の労働条件の明示は出向元・出向先のいずれが行うのか?
2024.10.23 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【職場や外出先への移動時間は労働時間に該当するか】
2024.10.23 これまでの情報配信メール
令和6年年末調整における定額減税に関する事務・簡易な扶養控除等申告書について
2024.10.16 大野事務所コラム
本当に「かぶ」は抜けるのか―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊱
2024.10.11 これまでの情報配信メール
令和6年版労働経済の分析(労働経済白書)について
2024.10.09 大野事務所コラム
労働者死傷病報告等の電子申請義務化について
2024.10.04 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(前編)】
2024.10.02 これまでの情報配信メール
労働者死傷病報告の報告事項改正及び電子申請義務化について
2024.10.02 大野事務所コラム
女性活躍推進法の改正動向
2024.09.26 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【社会保険の適用が拡大されます】
2024.09.25 大野事務所コラム
社会保険の同月得喪と2以上勤務を考える
2024.09.18 大野事務所コラム
理想のチーム
2024.09.11 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは②
2024.09.11 これまでの情報配信メール
令和6年度地域別最低賃金額の改定状況について・大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドラインについて
2024.09.04 大野事務所コラム
フレックスタイム制適用時における年次有給休暇の時間単位取得と子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得
2024.08.28 大野事務所コラム
やっぱり損はしたくない!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉟
2024.08.31 これまでの情報配信メール
「健康保険資格情報のお知らせ及び加入者情報」の送付、マイナンバーカードの健康保険証利用について
2024.08.21 これまでの情報配信メール
雇用保険基本手当日額および高年齢雇用継続給付等の支給限度額変更・令和7年4月1日以降の高年齢雇用継続給付の段階的縮小について
2024.08.21 大野事務所コラム
ライフプラン手当のDC掛金部分を欠勤控除の計算基礎に含めてよいのか?
2024.08.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【減給の制裁における労働基準法の制限】
2024.08.10 これまでの情報配信メール
雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績について等
2024.08.07 大野事務所コラム
1か月単位の変形労働時間制における時間外労働の清算
2024.08.02 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【管理監督者の適正性】
2024.07.31 大野事務所コラム
健康情報取扱規程の作成は義務⁈②
2024.07.24 大野事務所コラム
ナレッジは共有してこそ価値がある
2024.08.01 これまでの情報配信メール
2024年 企業の「人材確保・退職代行」に関するアンケート調査 カスタマーハラスメント対策企業マニュアルと事例集
2024.07.19 これまでの情報配信メール
仕事と介護の両立支援に向けた経営者向けガイドライン
2024.07.17 大野事務所コラム
通勤災害における通勤とは①
2024.07.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【振替休日と割増賃金】
2024.07.10 大野事務所コラム
これまでの(兼務)出向に関するコラムのご紹介
2024.07.08 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【歩合給に対しても割増賃金は必要か?】
2024.07.03 大野事務所コラム
CHANGE!!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉞
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop