シリーズ 経営労務とコンプライアンス(第4回)
本コラムは、当事務所の代表社員である大野が、2012年に労働新聞に連載寄稿した記事をベースに同社の了解を得て転載するものです。
なお、今回の転載にあたり、必要に応じ適宜原文の加筆・修正を行っております。
〇アメリカの競争力戦略
競争力の源が「人材」にあることは間違いない。2007年8月に米国で競争力法が制定されているので、「H20年科学技術白書」を参考にみてみる。
この法律は、中国やインドの急速な経済発展等でますます激化する国際競争において米国の競争力優位を確保するために、研究開発によるイノベーション創出の推進や人材育成投資の促進をはかることを目的に取りまとめられた画期的なものとされる。
この法律制定の背景にあるのは、2004年12月にアメリカの国際競争力、経済成長、雇用確保を根源から支えるイノベーション力の強化についての衝撃的提言、通称「パルミサーノ・レポート」である。そこでは21世紀型のイノベーションの環境と仕組みの変化を受けて、イノベーション力の礎となる人材、資本、インフラについての国家の総合戦略を提言している。
その問題意識は「アメリカは歴史的転換点に立っている。それはかってなかった事態、つまりグローバル競争の新段階とイノベーション自体の変質から生じている。この状況はかって経験したことのない地政学的状況でありアメリカに機会と危険をもたらしている。この新しい歴史的現実にどのように対応するのかの選択が問われている」というものである。
「地理的に、産業別にもイノベーションがどこで、どのように、なぜ、生じるのかが流動化してきた」ので「経済と社会が変化して価値の創造の仕組み、成功の尺度、競争の優位条件などで転換が生じる。21世紀においてこの変化は加速化し、その中で従来の政策、インセンティヴ、経営戦略を墨守、漸進的な組織の改革や教育課程の改善を重ねることは十分でないどころか非生産的ですらある」という認識である。
では、アメリカは何をなすべきか?
「短期の経営成績に近視眼的にとらわれることなく長期的視野に立った経営計画と投資を実行して人材、資本、インフラを、21世紀のイノベーション成功のために動員すべきで」あり「進むべき道はよりオープンに、より新しい試みの遂行と未知への挑戦である。アメリカの諸組織が内向きになることなく、集権化することなく、硬直化することなく、リスク回避的になることなく、企業経営に例えれば、自由と探索をコア・コンピタンスにすべきである。イノベーションを遂行する力が競争力という果実をもたらす」との宣言である。
会社国家米国の上記の宣言は、まさに会社経営においての人材戦略とそのマネジメント方針でもあり参考となる。
以上
※次回(第5回)掲載日は、4月6日を予定しております。
シリーズ
本コラムは、当事務所の代表社員である大野が、2012年に労働新聞に連載寄稿した記事をベースに、同社の了解を得て転載したものです。
ガバナンスと内部統制およびコンプライアンスの意味と位置づけを確認し、会社の成長、価値の向上に貢献する「経営労務」について、15回にわたり本コラムにて連載させていただきました。
なお、今回の転載にあたり、必要に応じ適宜原文の加筆・修正を行っております。
過去のニュース
ニュースリリース
- 2024.08.22 ニュース
- 【正規職員・契約職員・パート職員募集】リクルート情報
- 2024.11.20 大野事務所コラム
- 介護についての法改正動向
- 2024.11.14 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【未払い賃金請求権と時効期間】
- 2024.11.22 これまでの情報配信メール
- データでみる70歳以上の定年・継続雇用制度の導入効果と工夫、大野事務所モデル規程・協定一部改定のお知らせ
- 2024.11.12 これまでの情報配信メール
- 過重労働解消キャンペーン、2024年12月からの企業型DCおよびiDeCoの変更点について
- 2024.11.13 大野事務所コラム
- PRIDE指標をご存知ですか
- 2024.11.06 大野事務所コラム
- AIは事務所を救うのか?
- 2024.11.05 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(中編)】
- 2024.10.31 これまでの情報配信メール
- 賃金のデジタル払い、令和7年3月31日高年齢者雇用確保措置における経過措置期間の終了について
- 2024.10.30 大野事務所コラム
- 通勤災害における通勤とは③
- 2024.10.23 大野事務所コラム
- 在籍出向者を受け入れる際の労働条件の明示は出向元・出向先のいずれが行うのか?
- 2024.10.23 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【職場や外出先への移動時間は労働時間に該当するか】
- 2024.10.23 これまでの情報配信メール
- 令和6年年末調整における定額減税に関する事務・簡易な扶養控除等申告書について
- 2024.10.16 大野事務所コラム
- 本当に「かぶ」は抜けるのか―「人と人との関係性」から人事労務を考える㊱
- 2024.10.11 これまでの情報配信メール
- 令和6年版労働経済の分析(労働経済白書)について
- 2024.10.09 大野事務所コラム
- 労働者死傷病報告等の電子申請義務化について
- 2024.10.04 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【年次有給休暇の付与や取得等に関する基本的なルールと留意点(前編)】
- 2024.10.02 これまでの情報配信メール
- 労働者死傷病報告の報告事項改正及び電子申請義務化について
- 2024.10.02 大野事務所コラム
- 女性活躍推進法の改正動向
- 2024.09.26 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【社会保険の適用が拡大されます】
- 2024.09.25 大野事務所コラム
- 社会保険の同月得喪と2以上勤務を考える
- 2024.09.18 大野事務所コラム
- 理想のチーム
- 2024.09.11 大野事務所コラム
- 通勤災害における通勤とは②
- 2024.09.11 これまでの情報配信メール
- 令和6年度地域別最低賃金額の改定状況について・大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドラインについて
- 2024.09.04 大野事務所コラム
- フレックスタイム制適用時における年次有給休暇の時間単位取得と子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得
- 2024.08.28 大野事務所コラム
- やっぱり損はしたくない!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉟
- 2024.08.31 これまでの情報配信メール
- 「健康保険資格情報のお知らせ及び加入者情報」の送付、マイナンバーカードの健康保険証利用について
- 2024.08.21 これまでの情報配信メール
- 雇用保険基本手当日額および高年齢雇用継続給付等の支給限度額変更・令和7年4月1日以降の高年齢雇用継続給付の段階的縮小について
- 2024.08.21 大野事務所コラム
- ライフプラン手当のDC掛金部分を欠勤控除の計算基礎に含めてよいのか?
- 2024.08.15 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【減給の制裁における労働基準法の制限】
- 2024.08.10 これまでの情報配信メール
- 雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績について等
- 2024.08.07 大野事務所コラム
- 1か月単位の変形労働時間制における時間外労働の清算
- 2024.08.02 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【管理監督者の適正性】
- 2024.07.31 大野事務所コラム
- 健康情報取扱規程の作成は義務⁈②
- 2024.07.24 大野事務所コラム
- ナレッジは共有してこそ価値がある
- 2024.08.01 これまでの情報配信メール
- 2024年 企業の「人材確保・退職代行」に関するアンケート調査 カスタマーハラスメント対策企業マニュアルと事例集
- 2024.07.19 これまでの情報配信メール
- 仕事と介護の両立支援に向けた経営者向けガイドライン
- 2024.07.17 大野事務所コラム
- 通勤災害における通勤とは①
- 2024.07.16 ニュース
- 『月刊不動産』に寄稿しました【振替休日と割増賃金】
- 2024.07.10 大野事務所コラム
- これまでの(兼務)出向に関するコラムのご紹介
- 2024.07.08 ニュース
- 『workforce Biz』に寄稿しました【歩合給に対しても割増賃金は必要か?】