「対立」は当然に起こり得る―「人と人との関係性」から人事労務を考える⑰
大野事務所の今泉です。寒いですね。
さて、私が担当するコラムの2022年1回目となりますが、しばらく「対立」もしくは「衝突」をテーマに進めたいと思います。
「対立」・「衝突」というとトラブルへの発展であったり、紛争の発生を想起させる、どちらかというとネガティブなイメージがあります。しかしながら、職場においてもディスカッションにおける意見の対立は起こり得るものですし、こういったことは日常的なものであると思います。このことは裏を返せば活発に意見が交換されているということもでき、様々なアイディアや主張が出されているということでもあるでしょう。このような(前向きな)意見対立が起こることは健全な組織であるという証ともいえるかもしれません。
むしろ、対立も起こらず組織としての意思決定がすんなりと通ってしまう方が危ういように思えます。もちろん、誰が見ても異論の余地がない判断というものも多く存在しますが、一方で不確定性を伴う難しい判断を強いられる状況においては、あらゆる主張・意見が出されることで、幅広い視点を獲得することができるでしょう。その上で組織として最善の結論を導く、そんな効用が「対立」・「衝突」にはあるといえます。
しかしながら、このような(前向きな)「対立」・「衝突」は歓迎できるものとしても、そういうものばかりではないのが現実です。残念ながら文字通りの(後向きな)「対立」・「衝突」も起こるのが、われわれの日常といえます。
そもそもなぜ「対立」や「衝突」が起こるのか、というと性格・年齢・環境・背景等がそれぞれ異なる個人個人が意見を言えば、その考えや主張は自ずと異なったものとなるから、ということとなるでしょうが、職場においても、年齢の差、職位や立場の違いあるいは、パート社員・派遣社員・契約社員・正社員といった雇用体系の相違はもちろんのこと、就労経験や能力によっても差異が存在するといえるかもしれません。ただ、それはいわば当たり前のことであり、そうである以上「対立」や「衝突」は避けて通れないものといえるのではないでしょうか。この点、「対立」・「衝突」に至る要素としては、主に3つに分類されるといわれています。
①条件の対立
お互いの目標・目指すところや仕事内容の違い、あるいはお互いに課せられた条件が違うために起こるとされているものです。例えば、
・品質 VS コスト
・安全 VS 納期
・上司 VS 部下
・売上増VSコストダウン
等が代表的でしょう。
②認知の対立
思考、認知、価値観の違いが原因となり発生する対立のこととされます。いわゆる解釈の違いといってもよいでしょう。例えば、
・理想 VS 現実
・印象 VS 事実
等が具体例です。思考や価値観はその人のパーソナリティにも由来するため、解決の難易度も少々高くなるといわれています。
③感情の対立
お互いの感情が原因となって起きる対立のことです。例えば、
・優越感 VS 劣等感
・満足感 VS 不満足感
・愛情 VS 無関心
等です。気持ち・心情のぶつかり合いが原因となるため、解決難易度は最も高いとされます。また、複合的な要因が考えられることから、根深くなりやすいといわれています。
これらの対立が起こった場合に、放っておいてはただの諍いに終わってしまうこととなります。後向きといえる対立であってもこれを収束しできるだけ前向きな方向で解決したいものです。
これを収束させるものとして、「コンフリクト・マネジメント」という手法があります。
名前は聞いたことがあるという方もいらっしゃると思われますが、次回以降このコンフリクト・マネジメントについて、その内容に触れていきたいと思っています。
ところで、以前、心理的安全性について書いた際に「対人リスクをテイクしても大丈夫という安心感をもたらし、発言することを自ら抑制しなくとも問題ない、むしろ積極的な意見交換ができる」という環境をつくり出すことが重要であると述べました。これは健全な衝突を促し組織を活性化させる、という意味でコンフリクト・マネジメントと似た概念といえるかもしれません。しかしながら、コンフリクト・マネジメントは健全とはいえない(後ろ向きな)対立が起こった場合もその対象とする点で異なるものといえます。
むしろ、対立がどのような性質のものであれ、それは当然に起こり得るという前提の下、当事者にwin-winの関係をもたらすための手法が「コンフリクト・マネジメント」ということとなります。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
今泉 叔徳 特定社会保険労務士
パートナー社員
群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。
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