有期雇用契約における試用期間の法的効果
パートナー社員の野田です。
担当している企業様でも見受けられることですが、労務DDを行っているなかで、有期の雇用契約者に対し試用期間を設定されている状況を多く確認しますので、今回は有期雇用契約における試用期間の法的効果について確認します。
試用期間について規定している法令は無く、大企業を中心に労働慣行として導入されてきた制度といえます。
試用期間について諸説あるものの、現在は「解約権留保付労働契約説」が採られており、長期雇用制度下の正社員等において入社後の一定期間を「試用・見習期間」とし、この間に採用者の人物や能力を評価して本採用とするか否かを判定する期間とされています。
つまり、長期雇用、無期雇用を前提としたなかで、本採用をする前の正社員等としての適格性を判定するための試みの使用を「試用」としていますので、有期雇用契約において試用期間を設定することは想定されておらず、馴染まないものと言えます。また、労働契約法17条では、以下のように規定しています。
【労働契約法17条(契約期間中の解雇等)】
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
第1項では「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」としていますので、例えば、1年の雇用期間を設定したなかで3カ月間の試用期間を設定したとしても、「思っていたような能力が無い、ミスが多い、協調性が無い」といった理由で安易に本採用拒否(中途解約)してしまうと、トラブルに発展します。
有期雇用者に対し試用期間を設定することが直ちに法違反になる訳ではありませんが、やむを得ない事由がない限り中途解約することは困難ですので、採用後に適格性を判定したいのであれば初回の契約については、試用期間的に3ヵ月~6ヵ月といった短めの期間を設定し、当該期間中にしっかりと評価のうえ、更新の有無について判断されることをお勧めします。
昨今は「キャリアアップ助成金」などもあることから、6ヵ月以上の有期雇用社員を無期雇用社員や正社員に転換することがありますが、この場合は有期契約期間が試用期間的な意味合いを持つことから、正社員等への転換時に試用期間を設定したとしても「解約権留保付労働契約期間」とはなりません。
なお、試用期間を設ける場合には、就業規則等に規定しておくことが基本となります。2ヵ月~6ヵ月で設定されている企業がほとんどだと思われますが、試用期間中に私傷病等による欠勤・休業が発生した場合には当該期間を延長できるよう、規定しておくべきものと考えます。
執筆者:野田
![野田 好伸](https://www.ohno-jimusho.co.jp/wp-content/uploads/2023/06/noda-2.png)
野田 好伸 特定社会保険労務士
代表社員
コンサルタントになりたいという漠然とした想いがありましたが、大学で法律を専攻していたこともあり、士業に興味を持ち始めました。学生時代のバイト先からご紹介頂いた縁で社労士事務所に就職し、今に至っています。
現在はアドバイザーとして活動しておりますが、法律や制度解説に留まるのではなく、自身の見解をしっかりと伝えられる相談役であることを心掛け、日々の業務に励んでおります。
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