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手続き業務のRPA化に取り組んでいます

こんにちは。大野事務所の高田です。

 

今回は、社労士の手続き業務のRPA化について、ここ最近の私自身の取り組みを基に書いてみたいと思います。

 

1.RPA(Power Automate Desktop)について

 

RPAというのはRobotic Process Automationの頭文字を取った用語で、私たちが日々手書きやパソコンで行っている様々な業務(入力、集計等)を自動化する仕組みのことです。Excelのマクロのようなものをイメージして頂くと分かりやすいと思いますが、Excelのマクロは基本的にExcelファイル内の処理を自動化するものであるのに対して、RPAはパソコン内のあらゆるアプリケーションの操作や連携にまで及んで自動化できるのが特徴です。

 

システム分野に詳しい方であればご存知かと思いますが、今年3月に、マイクロソフト社がWindows10ユーザーを対象にRPAアプリケーション(Power Automate Desktop。以下「PAD」。)を無償提供するとのニュースが流れました。
◆マイクロソフト社 Power Automate Desktopのサイト
https://flow.microsoft.com/ja-jp/desktop/

 

2.PAD導入の経緯について

 

当事務所でも手続き業務の効率化・省力化は長年のテーマですが、近年は、行政の手続き自体が合理化・簡素化の方向へ向かいつつあること、また、業務システムが便利で使いやすいものへと進化していることなどから、私がこの業界に身を置くようになった10数年前と比べれば、一定程度の進歩を実感しているところです。一方で、相変わらず紙の帳票を手書きしたり、手書きとはいかないまでもExcelやWordの様式に手入力したり、また、基幹業務システムへの入力についても、データ取込に対応していない部分は依然として帳票を見ながら手入力したりといった作業も完全には無くなりませんので、これらの作業をいかに効率化・省力化するかが事務所全体の業務改善の鍵となっています。

 

RPAは、まさにこのような手入力作業の自動化を実現するものとして期待されるわけですが、以上のような背景もあって、私自身も実際にこちらのPADを試してみました。私自身は、プログラム言語というものをまったく勉強したことがありませんし、Excelのマクロも初級程度のスキルしか持ち合わせていませんが、そのような私でも、このPADは理解しやすく(何よりもコードが英語ではなく日本語で表記されているところ)、1~2週間ほど実際に動かしているうちに、ある程度使いこなせるようになってきました。ある程度要領が分かってくると、実際の業務に活用できるものを作ってみたくなるものです。そこで思い立ったのが、以下の2つの業務のRPA化です。

 

3.実際にRPA化してみての感想

 

① 当事務所が手続き業務にメインで使用している業務システムへの入力作業
② 上記システムがAPI連携していないe-Gov電子申請の入力作業

 

①は、たとえば、顧問先様から頂戴する入社者等の情報をシステムに入力する作業や、離職証明書等の賃金情報をシステムに入力する作業のことです。このような作業はシステム側がデータ取込に対応している部分もありますが、顧問先様から頂戴したデータを取込形式に揃える方が却って手間がかかるなどの事情もあり、未だに手入力が多く行われているのが実状です。このような場面で、RPAが活躍するのではないかということです。

 

②は、たとえば、36協定届等の労使協定届や労働保険の事業所関係の届などのe-Gov電子申請が挙げられます。当事務所の業務システムは、社会保険や雇用保険の適用関係の手続き(資格取得、喪失等の主に被保険者関係の手続き)はe-GovとのAPI連携(システム間で連携していること)が実現されており、この部分におけるRPA化は不要です。一方で、36協定届等の労使協定届や労働保険の事業所関係の届などは業務システムが対応していないため、いまだに紙様式で届け出る機会が多く残っています。最近ようやく当事務所内でも紙様式からe-Gov電子申請へとシフトしつつありますが、そのe-Gov電子申請についても、申請書のインターフェイスが今一つ洗練されておらず、必ずしも私たちユーザーにとって使い勝手がよいものとはいえません。本来的には、e-Govの方に改善を図って頂きたいところなのですが、それを期待して待っていてもいつになるのか分かりませんので、そこでRPAの出番というわけです。

 

①②ともに、具体的には、予め所定のExcelシートに入力しておいた内容を、RPAが読み取り、業務システムあるいはe-Govの所定の項目に1つずつ転記入力していくという作業工程です。先にご紹介したPADで私自身が試作したものも、概ね期待した通りの速度、精度で動かすことができています。RPAの特性上、そのときのパソコン内部や通信状態の影響を受けて、動作が重くなったり想定外の動きをしたりといったエラーも稀には生じます。とはいえ、人の手で行うよりは圧倒的に速い上に正確ですので、現状の業務プロセスと比較すれば、遥かに効率化・省力化が図られることは間違いありません。現状では、当事務所の業務の中からごく一部において実現してみたレベルに過ぎませんが、今後は、なるべく多くの所内スタッフが多くの時間を投入している作業を中心に、順次RPA化を進めていきたいと考えています。

 

今、RPAを検討している企業の方、どのように導入したらよいのか悩んでいるという担当者の方は世の中に多くいらっしゃるのではないかと想像します。当事務所や私自身はこの分野が専門ではありませんが、今回ご紹介したPADに関していえば、私のような者でもある程度の訓練で習得することができ、単純な作業工程をRPA化する程度のことであればそれほど難しくありません。もしご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、「百聞は一見に如かず」ですので、是非ご自身の手で触ってみて頂きたいと思います。とにもかくにも無償でリリースされているわけですので、「うまくいかなくても損害は無し。うまくいったら儲けもの。」くらいの軽い気持ちで、まずは試してみる姿勢が大事かと思います。

 

図1

 

執筆者:高田

高田 弘人

高田 弘人 特定社会保険労務士

パートナー社員

岐阜県出身。一橋大学経済学部卒業。
大野事務所に入所するまでの約10年間、民間企業の人事労務部門に勤務していました。そのときの経験を基に、企業の人事労務担当者の目線で物事を考えることを大切にしています。クライアントが何を望み、何をお求めになっているのかを常に考え、ご満足いただけるサービスをご提供できる社労士でありたいと思っています。

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