TOP大野事務所コラム「人と人との関係性」から人事労務を考える①

「人と人との関係性」から人事労務を考える①

大野事務所の今泉と申します。

今後本コラムの担当の1人として情報提供させていただくことになりました。

よろしくお願いいたします。

 

さて早速ですが、日頃たくさんの人事労務管理に関するご質問・ご相談をいただきます。法令に関する解釈適用の問題や就業規則はじめ社内規程等の確認はもちろんのこと、中には会社として制度を変えたいと考えているときに、トラブルが起こらないように進めたい、とか、トラブルが発生しそうだが、どのように対応すればよいか等、いわゆる予防の観点からのご相談をいただくこともあります。

 

一方で、残念ながらトラブルになってしまってから、今後どのようにすれば良いかということをほとほと困ったという感じでお電話いただく、ということもあります。

このようなケースについて、なぜそのようにトラブルとなってしまったのか、その経緯を確認してみると、「この時点での対応がマズかったんだな。」とか「このように対応すれば良かったのに。」と思うことがしばしばです。

分かりやすい例を挙げると、「ハラスメントによる被害を受けた」と社内の相談窓口に問い合わせがあったとしましょう。当然のことながら事実確認として被害者に対してヒヤリングを実施することになると思われますが、その際に面談者が「あなたにも落ち度があったんじゃない?」と発言したら被害者はどう思うでしょう。結論は言うまでもありませんね。

 

確かにここまで露骨な失言はあまりないかもしれません。しかし、これに限らず上司と部下、同僚間、自部門と他部門、会社間などにおいてコミュニケーションをうまく図れず失敗することは間々あると思います。このことは人事労務トラブルの発生についても同様で、その大きな原因の一つに、いわゆるコミュニケーション不全があることは間違いないでしょう。それに加えて人の意識、モチベーション、影響関係ひいては企業風土・文化など「目に見えない要素」が人事労務管理には大きく影響していると考えます。

 

そこで、今回私が担当するコラムではこのような目に見えない要素、いうなれば組織における「人と人との関係性」にまつわることについて考えたこと、感じたこと、学んだことをこの場を通して主にお伝えしていければ、と思い立ちました。時々脇道に逸れることもあると思いますが、ご一読いただけますと幸いです。

 

さて、上記で「コミュニケーション不全」と簡単に書きましたが、その内容は多岐にわたります。そもそもコミュニケーションという言葉自体どういう意味なのか、はっきりとは分からないような気もします。日本語でも「コミュニケーション」という言葉が定着し、そのまま使用されているくらいですから、適切な訳語がないということなのでしょう。

一般的にコミュニケーションとは、『情報⇔伝達⇔(相手側の)理解』という一連の作用のことを指していると考えられます。ここでは「(相手側の)理解」を平たく「共有」という言葉で代用することもあります。矢印が双方向なのは、一方向的なアクションで完結するのではなく、リアクションがあり、それが繰り返される、ということを意味します。

これが不全である、ということは次のようなことになるのではないでしょうか。

 

 

情報に問題があれば、その他2つに問題がなくともトラブルに発展する可能性があります。情報に問題はなくとも伝達手段に問題があれば、相手側の理解に問題が生ずる可能性があり、トラブルに発展しかねません。情報・伝達に問題がなくとも相手側の理解に問題があれば、やはりトラブルとなり得ます。

つまり、この3要素全てに問題がない、というときに初めて健全なコミュニケーションが成立すると考えられます。

 

では、どうすれば3要素全てに問題がないコミュニケーションをつくり出すことができるのか。先のハラスメントの事例のようなことにならずに済むのか。それは次回以降の話題とさせていただこうと思います。

 

ところで、現在テレワークの導入が進んでいますが、少し前のパーソル研究所の調査によると、テレワークを行っている人の「不安」をランキング化した結果、1位は「相手の気持ちが分かりにくい」で37.4%だったということです。つまり深いコミュニケーションの取りづらさに「不安」を感じているということなのでしょう。web会議システムやチャットツールなどが充実してきていますが、慣れることも含めてこのようなコミュニケーション・ツールをいかに上手に活用できるかが快適なテレワークを実現させるためのカギといえるかもしれません。

 

ただ、確かにとても便利ではあるのですが、対面等での直接的なコミュニケーションが図れない、ということはストレスに繋がることも往々にしてありますよね。

 

 

今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

執筆者:今泉

今泉 叔徳

今泉 叔徳 特定社会保険労務士

パートナー社員

群馬県桐生市出身。東京都立大学法学部法律学科卒業。
人事労務関係の課題解決の糸口としてコミュニケーションや対話の充実があるのではないかと考え、これにまつわるテーマでコラムを書いてみようと思い立ちました。日頃の業務とはちょっと異なる分野の内容ですので、ぎこちない表現となってしまっていたりすることはご了承ください。
休日には地元の少年サッカーチームでコーチ(ボランティア)をやっていて、こども達との「コミュニケーション」を通じて、リフレッシュを図っています。

その他のコラム

過去のニュース

ニュースリリース

2024.07.03 大野事務所コラム
CHANGE!!―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉞
2024.06.26 大野事務所コラム
出生時育児休業による社会保険料免除は1ヶ月分?2ヶ月分?
2024.06.19 大野事務所コラム
改正育児・介護休業法への対応(規程・労使協定編)
2024.06.17 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【社員への貸付金や立替金を給与で相殺できるか】
2024.06.12 大野事務所コラム
株式報酬制度を考える
2024.06.07 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【振替休日と代休の違い】
2024.06.05 大野事務所コラム
As is – To beは切り離せない
2024.05.29 大野事務所コラム
取締役の労働者性②
2024.05.22 大野事務所コラム
兼務出向時に出向元・先で異なる労働時間制度の場合、36協定上の時間外労働はどう考える?
2024.05.21 これまでの情報配信メール
社会保険適用拡大特設サイトのリニューアル・企業の配偶者手当の在り方の検討について
2024.05.17 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【法的に有効となる定額残業制とは】
2024.05.15 大野事務所コラム
カーネーションと飴(アメ)―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉝
2024.05.10 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【算定基礎届(定時決定)とその留意点(後編)】
2024.05.08 大野事務所コラム
在宅勤務手当を割増賃金の算定基礎から除外したい
2024.05.01 大野事務所コラム
改正育児・介護休業法への対応
2024.05.11 これまでの情報配信メール
労働保険年度更新に係るお知らせ、高年齢者・障害者雇用状況報告、労働者派遣事業報告等について
2024.04.30 これまでの情報配信メール
令和4年労働基準監督年報等、特別休暇制度導入事例集について
2024.04.30 これまでの情報配信メール
所得税、個人住民税の定額減税について
2024.04.30 これまでの情報配信メール
現物給与価額(食事)の改正、障害者の法定雇用率引上等について
2024.04.24 大野事務所コラム
懲戒処分における社内リニエンシー制度を考える
2024.04.17 大野事務所コラム
「場」がもたらすもの
2024.04.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【年5日の年次有給休暇の取得が義務付けられています】【2024年4月から建設業に適用される「時間外労働の上限規制」とは】
2024.04.10 大野事務所コラム
取締役の労働者性
2024.04.08 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【算定基礎届(定時決定)とその留意点(前編)】
2024.04.03 大野事務所コラム
兼務出向時の労働時間の集計、36協定の適用と特別条項の発動はどう考える?
2024.03.27 大野事務所コラム
小さなことからコツコツと―「人と人との関係性」から人事労務を考える㉜
2024.03.21 ニュース
春季大野事務所定例セミナーを開催しました
2024.03.20 大野事務所コラム
退職者にも年休を5日取得させる義務があるのか?
2024.03.15 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【2024年4月以降、採用募集時や労働契約締結・更新時に明示すべき労働条件が追加されます!】
2024.03.21 これまでの情報配信メール
協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率、雇用保険料率、労災保険率、マイナンバーカードと保険証の一体化について
2024.03.26 これまでの情報配信メール
「ビジネスと人権」早わかりガイド、カスタマーハラスメント防止対策企業事例について
2024.03.13 大野事務所コラム
雇用保険法の改正動向
2024.03.07 ニュース
『workforce Biz』に寄稿しました【専門業務型裁量労働制導入の留意点(2024年4月法改正)】
2024.03.06 大野事務所コラム
有期雇用者に対する更新上限の設定と60歳定年を考える
2024.02.28 これまでの情報配信メール
建設業、トラック等運転者、医師の時間外労働の上限規制適用・令和6年度の年金額改定について
2024.02.28 大野事務所コラム
バトンタッチ
2024.02.21 大野事務所コラム
被扶養者の認定は審査請求の対象!?
2024.02.16 ニュース
『月刊不動産』に寄稿しました【派遣労働者の受入れ期間の制限〈後編〉】
2024.02.14 大野事務所コラム
フレックスタイム制の適用時に一部休業が生じた場合の休業手当の考え方は?
2024.02.16 これまでの情報配信メール
令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A 等
HOME
事務所の特徴ABOUT US
業務内容BUSINESS
事務所紹介OFFICE
報酬基準PLAN
DOWNLOAD
CONTACT
pagetop