伝えるということ、そして私たちの役割
こんにちは。大野事務所の深田と申します。
野田からスタートした本コラム、今回は私が担当させていただきます。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、極めて短期間のうちに世の中の景色が一変しましたが、様々な変化の中でも在宅勤務の急速な進展については、私たち社会保険労務士が日頃の労務相談としてお受けする案件ということにとどまらず、弊所においても自分事として受け入れていくという状況になりました。
日頃のお客様とのやり取りの手段としては、対面以外では電話またはメールということになるわけですが、高い頻度での在宅勤務を要するようになったことで、弊所でもお客様対応についてメールを基本とする形を現在は採らせていただいております。お客様にはご不便をお掛けしているところではありますが、一方でそれほどの緊急事態だということをまざまざと突き付けられていると感じます。コロナ禍によって行動の変化を迫られる中、コミュニケーション手段の軸足がよりメールへと移っていくことで、それまでは当たり前のように存在しながら利便性などでメールに水をあけられつつあったようにも思える電話については、かえってメリットが見えてくるということもあるのでしょう。
社会環境の急激な変化は今後も当たり前のように起きるのだと思いますが、変化の象徴たるAIの発達によって人間の仕事のあり方も変わろうとしています。
我々士業の領域ではリーガルテックなどということが言われており、例えば規程類や契約書のリーガルチェックや判例の検索といったものは、AIとの親和性も比較的高いように思われます。
では、我々の労務相談業務の場面ではどうでしょうか。あまり良い話ではないものをあえて引き合いに出しますが、労働条件の不利益変更についてはその度合いは様々であるものの、これまで少なからずご相談を受けてまいりました。実務対応上は、その「度合い」というのがやはりポイントでして、その度合いに応じて進め方のさじ加減も変わってきますし、そもそも不利益変更をやる前にできることはないのか、という観点も必要です。企業としては役所には照会しづらい内容という点も含め我々の知見を活かす場面ですし、AIでの対応は現状では難しいものと推測します。
また、私どもがお客様へ見解をお伝えする上では、こうした内容の場合にはメールよりも電話に分があるといえます。会社の置かれた状況を細かく確認した上で、どこまでのことができるのか・・・、こういうことが起きた場合には・・・、従業員の方々へのメッセージの言葉選びや伝え方・・・などなど、メールでつぶさに表現するのは難しいですし、長文になればなるほど読み手にとっては苦痛かもしれません。
とはいえ一方で、記録を残すという意味でもメールでの回答をお客様が望まれることもありますので、そうした際の的確な文章構成にも気を配る必要があります。
そうしたさじ加減の微妙な案件でこそ、誠実な人間らしさを出していきたいものです。
不利益変更を例にとって思うままに書き連ねましたが、不利益変更に限らず労務問題は人間相手のことですから、一瞬で解決できる魔法のような言葉など存在しません。解決方法をお客様と一緒に考えていくことに私どもの役割を感じるとともに、AIには容易に代替されない領域が少なくないであろうとも思うわけです。
もちろん、「少なくないであろう」と期待しているだけではなく、スピード感をもって精進していきたいと考えています。
執筆者:深田
深田 俊彦 特定社会保険労務士
労務相談室長 管理事業部長/パートナー社員
社会人1年目のときの上司が元労働基準監督官だったことが、労働分野へ関心を寄せるきっかけとなりました。
日頃からスピード感を持って分かりやすくまとめ、分かりやすく伝えることを心掛けています。また、母の「人間は物事が調子良く進んでいるときに感謝の気持ちを忘れがちである」という言葉を、日常生活でも仕事の上でも大切にしています。
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